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【今日実施】福島第一原発の廃炉へ、ロボ調査は何を掴むか?

デブリにはじめて触る
【今日実施】福島第一原発の廃炉へ、ロボ調査は何を掴むか?

模擬デブリ堆積物をつかむ調査ロボ(東芝エネシステムズ提供)

 東京電力は燃料デブリ(溶け落ちた核燃料)にはじめて触るロボット調査を始める。2月中旬にも福島第一原子力発電所2号機に釣りざお型ロボットを投入し、デブリと見込まれる堆積物に直接触れて硬さやもろさを確認する。注目されるのはデブリと床との固着状況だ。結果によっては2019年下期に控える広域ロボ調査にも大きく影響する。

先端に2本の指 


 18年1月、2号機の原子炉圧力容器を支える円筒状の構造物(ペデスタル)の地下階にカメラが進入した。圧力容器から溶け落ちたデブリなどの堆積物の全容を撮影した。この調査で活躍した釣りざお型ロボを改良し先端に2本の指を付けた。今回の調査で実際に触り、小石状の堆積物は挟んで拾い上げられるか、粘土状の堆積物は指でひっかいて表面をそげるか確認する。

 開発に当たった東芝エネルギーシステムズ(川崎市幸区)の安田年廣担当部長は「技術者の多くは小石状は小石、粘土状は粘土と、見た目の通りだろうと考えている。それを確かめる」と意図を説明する。広域調査で装置を投入してから、デブリが固着していて回収できないとなれば大問題だ。その前に実績のある装置で堆積物の性状を確かめる。

 広域調査の装置は現在、英国で開発中だ。長尺のロボットアームを6節に畳み、格納容器の中で展開してペデスタルまで10メートル以上の腕を伸ばす。ペデスタル内部をレーザーなどで計測して、デブリやがれきなどの詳細な3次元地図を作ることが主目的だ。そのためアーム先端の力は強くない。東芝エネの竹内努部長は「(今回の調査で)固着し、歯が立たないとわかれば想定を変える可能性もある」と説明する。

 反対に想定通りであれば「広域調査のアームの先にピンセットを付け、サンプルを採って帰りたいと考えたくなる」と小野明東電福島第一廃炉推進カンパニー代表は期待する。粘土状の堆積物も泥のように軟らかければ吸引で回収できる可能性がある。東京工業大学の小原徹教授は「デブリの性状がわかれば、事故で原子炉で何が起きたかシミュレーションの妥当性を確かめられる」と指摘する。

代表性が課題


 課題は調査箇所の代表性だ。今回の調査はロボットがアクセスできる場所が限られる。調査対象の堆積物はペデスタルの縁の鉄製ケーブルトレーの上だ。ケーブルトレーはその形状を保っており鉄とデブリが溶けて混ざったとは考えにくい。

 だが、デブリの多くはペデスタル中央で床のコンクリートと熱化学反応を起こし混ざり合っていると考えられる。固着状況は場所によって大きく変わる可能性がある。東芝エネの竹内部長は「中央も縁も堆積物は厚く、堆積物の表層という意味では大きな違いはない」とみる。こうした検証も調査の成否にかかっている。より多くの情報を集めるための重要な一歩になる。
(文=小寺貴之)
日刊工業新聞2019年2月7日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
調査は13日の早朝開始で、14時間ほどかかる予定です。釣りざお型ロボ改良され、さおの制御が遠隔化されました。現場で作業者がさおの先の位置を調整しなくてもすむようになりました。この調査は小野代表の意向で調査が決まったそうです。釣りざおの次の調査はデブリや堆積物のサンプル回収を計画しています。そのため放射線管理や封止システムが大がかりになっていて失敗はできません。その前に実績のある装置で、少しでも多くの情報を集めます。触るだけではありますが、次につながる初接触になるはずです。

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