福島第一原発の廃炉、作業員を支えているモノ
「やりがい感じる」は77.6%だが、一方で…
東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業の現場に評価の声が届いていない可能性がある。東電が毎年実施している廃炉従事者アンケートで、福島第一で働くことにやりがいを感じている従事者は、2018年は77・6%と前年比1・2ポイント向上した。ただ、その理由の多くが使命感などの内発的要因に支えられており、周囲に励まされるなどの外発的要因はわずか3・6%に留まった。福島第一の現場は非常に多くの困難に立ち向かっている。現場で働く一人ひとりのモチベーションを支える環境づくりが急がれる。
アンケートは18年9月に福島第一原発で働く従事者5031人から回答を得た。回答者に東電社員は含まれず、主に協力会社の従業員の声を集めて、労働環境の改善点を洗い出し、その効果を把握する目的がある。設問の一つに、福島第一で働くことへのやりがいを問う項目がある。やりがいを「感じている」と「まあ感じている」を合わせた回答が77・6%と、17年の76・4%から微かに増えた。
続けてやりがいの理由を問うと「福島の復興のため(使命感)」が45・6%、「福島第一の廃炉のため」が34・1%などの内発的要因が大部分を占め「周りの人から感謝される」は3・6%だった。過酷な現場のモチベーションを自身を奮い立たせる内発的要因で支えており、持続可能性があるとは言いがたい状況が続いている。
福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表は当面は、福島第一では『他にない仕事ができる』『仕事が面白い』といった内発的要因を盛り上げたい」と説明する。
内発的要因だけに頼らず、外発的要因への対策を打ち出しにくいのは、東電と社会との対話が必ずしもうまくいっていない背景もある。福島第一では高度な技術開発と無数のトラブル対応が並行して進む。ただ社会に周知されるのは不具合などの問題に偏りがちだ。
海外とのコミュニケーションはより難しい状況にある。東電の八木秀樹原子力・立地本部長代理は「海外での報道には事実ではないものも散見される。誤解が定着すると、その誤解を解くにはより時間がかかる」という。20年は東京五輪・パラリンピックを機に廃炉にも注目が集まるが、東電は20年に「実は安全」とはいえない。“実は”とは誤解の定着が前提になるからだ。19年に時間をかけてでも、現場の取り組みを伝える必要がある。
19年は燃料デブリ(溶け落ちた核燃料)と見込まれる堆積物に、ロボットで初めて触れて性状を確かめる。
小野代表は「19年はデブリ取り出しの初号機の見通しを立てるなどダイナミックに動く年になる」という。現場の取り組み発信を通して社会から健全な評価を得て、その評価を基に現場で働く一人ひとりのモチベーションを支えていくことが求められる。
(文=小寺貴之)
内発的要因
アンケートは18年9月に福島第一原発で働く従事者5031人から回答を得た。回答者に東電社員は含まれず、主に協力会社の従業員の声を集めて、労働環境の改善点を洗い出し、その効果を把握する目的がある。設問の一つに、福島第一で働くことへのやりがいを問う項目がある。やりがいを「感じている」と「まあ感じている」を合わせた回答が77・6%と、17年の76・4%から微かに増えた。
続けてやりがいの理由を問うと「福島の復興のため(使命感)」が45・6%、「福島第一の廃炉のため」が34・1%などの内発的要因が大部分を占め「周りの人から感謝される」は3・6%だった。過酷な現場のモチベーションを自身を奮い立たせる内発的要因で支えており、持続可能性があるとは言いがたい状況が続いている。
福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表は当面は、福島第一では『他にない仕事ができる』『仕事が面白い』といった内発的要因を盛り上げたい」と説明する。
東電の対応
内発的要因だけに頼らず、外発的要因への対策を打ち出しにくいのは、東電と社会との対話が必ずしもうまくいっていない背景もある。福島第一では高度な技術開発と無数のトラブル対応が並行して進む。ただ社会に周知されるのは不具合などの問題に偏りがちだ。
海外とのコミュニケーションはより難しい状況にある。東電の八木秀樹原子力・立地本部長代理は「海外での報道には事実ではないものも散見される。誤解が定着すると、その誤解を解くにはより時間がかかる」という。20年は東京五輪・パラリンピックを機に廃炉にも注目が集まるが、東電は20年に「実は安全」とはいえない。“実は”とは誤解の定着が前提になるからだ。19年に時間をかけてでも、現場の取り組みを伝える必要がある。
19年は燃料デブリ(溶け落ちた核燃料)と見込まれる堆積物に、ロボットで初めて触れて性状を確かめる。
小野代表は「19年はデブリ取り出しの初号機の見通しを立てるなどダイナミックに動く年になる」という。現場の取り組み発信を通して社会から健全な評価を得て、その評価を基に現場で働く一人ひとりのモチベーションを支えていくことが求められる。
(文=小寺貴之)
日刊工業新聞2019年1月9日