「必要ならば、日立やシーメンスとも組めば良い」(東芝CEO)

東芝会長兼最高経営責任者(CEO)・車谷暢昭氏に聞く

 ―2018年11月にまとめた中期経営計画はボトムアップで策定しました。
 「エンジニアの会社だけに、論理的で、正しいことをやりたい人が多い。納得しないと動かないので時間はかかったが、コンセプトを共有して積み上げられた。あとは確実にやりきるのが重要なテーマ。やりきる文化を東芝に根付かせたい。そのための組織変更も検討している」

 ―サイバーとフィジカル(実世界)の融合企業を目標に掲げます。
 「中計で手堅いモデルを構築し、収益性の高い組織を取り戻す一方、夢も追う。米IT大手4社(GAFA)はサイバー空間の独占が限界まできて、成長に陰りがみえる。規制の議論もある。次は実世界のデジタル化で自動運転が典型。電力や医療でも進むだろう。GAFAもこちらに接近してきているが、ハードウエアが得意な日本企業にチャンスはある」

 ―IoT(モノのインターネット)は競争が激しい分野で他社も力を入れています。
 「独シーメンスに比べ、我々が遅れているなどの議論はあまり意味がない。実世界でデジタル化できるレイヤーは無数にあり、二つ、三つ勝てればいい。得意なレイヤーを効率化したり、変革を起こしたりすれば、大きなビジネスになる。米ウーバーはタクシーに乗りたい人と車を提供したい人をマッチングするという狭いレイヤーで何兆円もの時価総額を生み出した。産業全般を手がける我々のポテンシャルの方がはるかに大きいはずだ」

 「重要なのは絶対に勝てそうなところで戦うこと。例えば、電力の送配電や販売時点情報管理(POS)では高いシェアを握っており、これらにサイバー技術を融合する。特定企業のプロセスのデジタル化でなく、社会変革を起こせる標準モデルを一気にグローバル展開できるかがカギになる」

 ―原発事業は今後も個社で手がけていきますか。
 「メンテナンス(保守)や廃炉などのビジネスはある。将来的に事業が小さくなれば、需要にあわせて、割く経営資源を小さくすればよい。(他メーカーとの再編は)合理的に判断していく」

【記者の目】
 ボトムアップの新中計は、海外投資家からの評価は高く、「再生の教科書に使える」との声もあったとか。ただ、それは「やりきれば」の話だ。「必要ならば、日立やシーメンスとも組めば良い」。車谷会長は社員にマインドセットの変更を訴える。画餅に帰さず、これまでと違う東芝を見せられるか。
(日刊工業新聞・栗下直也)

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