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エジソン生誕の日に考える、電機業界の栄枯盛衰

エジソンに議論を挑んだNEC創業者
エジソン生誕の日に考える、電機業界の栄枯盛衰

岩垂氏(最左)とエジソン・マシン・ワークス社のエンジニア(1887年3月撮影、Museum of Innovation & Science提供)

 きょうは2月11日。世界の発明王であるトーマス・エジソンが1847年のこの日に生まれた。その生涯で、蓄音機、白熱電球、映画など1000を超える特許を取得している。

 そのエジソンに議論を挑んだ日本人がいる。名前は岩垂(いわだれ)邦彦。1899年、米ウェスタン・エレクトリックと、日本で初めての合弁会社となる日本電気(NEC)を創業した人物だ。

 岩垂は、現在の東京大学工学部を卒業後、一時、明治政府の中央官庁である工部省に勤務した後、渡米し、エジソンの会社であるエジソン・マシンワークスに勤める。

 当時、米国では、電力供給を直流にするか、交流にするかで論争が起きていた。標準方式はエジソンが発明した直流送電だったが、使用が集中すると電圧が低下するという問題があった。一方、交流は遠距離でも電力損失が少なく、しかも直流に変換できる方式だった。

 日本の電化を進めるのに現地技術の仲介役を頼まれた岩垂は、交流を支持。これが原因でエジソンとの仲が悪化し退社。日本に帰国する。岩垂率いる交流設備の日本での電力供給は、安全性が向上し成功した。ボスに迎合することなく、冷静に技術を見極め、ぶれない心をもつ岩垂の精神は経営に生きている。

日刊工業新聞2019年2月11日



お手本はシーメンス


 日立製作所が英国で進めていた原子力発電所の新設計画を凍結することを決めた。2019年3月期連結決算で、約3000億円の損失を計上する。ただ、今回の決断によって米中貿易摩擦などマクロ経済の影響を除けば、日立にとって「唯一にして最大のリスク」が低減したことになる。IoT(モノのインターネット)を軸にしたデジタル製造業への転身を急ぐ。

 重電各社が今後、力を入れるのがIoT分野だ。産業分野には現場の機器データを吸い上げ、分析し、生産効率化につなぐ市場が大きく広がる。

 欧州を中心に世界で延べ1万社以上の顧客をつかむのはドイツ・シーメンス。開発から製造、調達まで事業プロセスのほぼ全領域をサイバー空間で統合管理するプラットフォームを持つ。シーメンスの圧倒的な強みは、自社の産業機器がすでにさまざまな工場に入り込んでいるところだ。この強みを生かし、製造業のデジタル化を後押しする。

 三菱電機も現場起点で工場の生産効率化を支援する。杉山武史社長は「機器の強さを活かしながら、今までにないソリューションを提供していく」と展望を語る。

 経営再建中の東芝もIoT分野の強化を急ぐ。後発ではあるものの、車谷暢昭会長兼CEOは、大きなプラットフォームで全ての市場と対峙(たいじ)するのではなく、「二つ、三つ勝てればいい」と語る。POS(販売時点情報管理)や送配電など、シェアが高い事業でのデジタル技術の融合を模索する。

 一方、迷走が続くのが米ゼネラル・エレクトリック(GE)だ。あらゆる産業機器のIoTのデファクトスタンダード(事実上の標準)を目指し、プラットフォーム「プレディクス」を投入したが、結果は鳴かず飛ばず。18年末にはデジタル関連事業の分社など事業再編を発表した。

 IoTはソフトに傾きがちだが、ハードの基盤を軽視すれば、GEの二の舞いになりかねない。米グーグルが電力事業に触手を伸ばすなど、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)もサイバー空間だけでなく事業を広げつつある。「確実に勝てるところで戦う」(車谷東芝社長)目利きも問われる。

 228億ドル(約2兆6000億円)―。20世紀の多角化の教科書とも言われたGEが18年7―9月期の当期損益で計上した赤字だ。

 事業構造見直しはGEの十八番だったが、その歯車が狂い始めている。誤算の始まりは、15年の仏重電大手、アルストムの買収。買収後に欧州を中心に石炭火力発電への逆風が強まり、減損処理損失は158億ドルに達した。

 一方、GEが栄華を極めたころ、低収益率に苦しんでいたのがシーメンス。90年代末に「10ポイントプログラム」に着手。利益率10%を目指し、事業の見直しを始めた。00年代半ば以降は半導体やパソコン、自動車部品、原子力なども切り離している。利益率が1桁で将来性が見込めない事業は撤退や売却することで、ここ十数年で事業の半分を入れ替えた。

 多くの日本の重電メーカーは「ベンチマークはシーメンス」と声をそろえる。15―17年度も利益率10%程度を維持しており、今やGEに代わり日本企業の教科書といえよう。

 国内では08年秋のリーマン・ショック後、各社は事業構造の見直しへ重い腰を上げた。リーマン・ショックの打撃が小さかったのは三菱電機。他社よりも先に携帯電話や半導体の事業を整理したことが奏功したが、日立と異なり、ここ10年で事業ポートフォリオは大きく変わらない。

 杉山社長は「競合に比べるとかなり絞り込んでいる。ただ、20年度以降を見据えた場合、成長分野にあてる人が足りず、既存の人員をシフトする必要がある。もう一段の選択と集中が必要だ」と語る。

日刊工業新聞2019年1月18日の記事から抜粋



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ABBの「直流」取り込む日立


 日立製作所は17日、スイスのABBの送配電や制御などのパワーグリッド事業を買収すると発表した。買収額は約7000億円で日立が手がけるM&A(合併・買収)では過去最大。送配電事業では世界首位に立つ。会見した東原敏昭社長は巨額買収については「グローバルリーダを獲得するには非常に良い買い物」と語った。

 ABBが対象事業を分社化して日立が2020年前半をめどに約8割を出資する。この時点で7000億円規模を投じる。その後、出資比率を高めることで完全子会社にする方針だ。

 買収対象部門の17年の売上高は約100億ドル、営業利益率は約9%。新興国を含め世界に顧客を持つが、ABBの中では相対的に利益率が低い。ABBは株主のファンドの意向もあり売却を決断したが、日立の電力・エネルギー事業(売上高約4500億円、営業利益率約6%)を大きく上回る。

 日立にとって魅力的なのはABBの事業規模や販路だけではない。日立のITを組みあわせて相乗効果を狙うほか、技術基盤に厚みをもたせ、新興国の電力網整備や再生可能エネルギー需要を取り込む。中でも「交流送電より送電効率が高く、接続する系統に制約が少ない『自励式』直流送電の技術では他社を寄せ付けない」(国内重電幹部)。

 関係者によると、今回の買収を巡っては中国国有企業の国家電網と競り合ったという。国家電網はブラジルの送配電最大手を買収するなど海外での足場固めを急ピッチに進める。東原社長は中国企業の台頭について「競争より協創によってグローバル展開した方がうまくいく」と述べた。

日刊工業新聞2018年12月18日



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NEC・新野隆社長インタビュー


 ―「企業文化を変える」など、中期経営計画で掲げた目標はどの程度進みましたか。
 「ここ半年間でいろいろな仕掛けを整備してきた。ただ、本気で何を目指して変わっていくのかは従業員全体として、まだ腹落ちしていない。2018年は改革しながら固定費も落とした。19年はターンアラウンドの年だ。改革をやり続け、自らが変わっていかなければならない」

 ―海外の営業赤字を19年3月期に収支トントンに改善するとしていますが、手応えは。
 「(黒字化には)前期比280億円の改善が必要だ。改善は進んでいるが、まだ100億円程度は読み切れていない。そこを詰めていく。誤算だったのはディスプレーと、蓄電装置などのエネルギー事業。もっと伸びると思っていたが、エネルギー事業は電池の調達金額の上昇が響いた。ディスプレーは営業黒字だが、前年比ではだいぶ減ってきている。これらをどこまで回復できるかが課題だ」

 ―海外の損益は全体でカバーできますか。
 「(懸案だった)『パソリンク』は順調だ。海底ケーブルなど、海洋事業も下期に回復し、受注残高が1000億円を超え、工場はフル稼働している。生体認証などを強みとするセーファシティーズ事業の伸びも順調だ」

 ―第5世代通信(5G)分野で韓国のサムスン電子と提携した背景を教えてください。
 「サムスンは米国の第4世代通信(4G)の基地局などで成功を収め、インドでも実績を持っている。開発費用の分担に加え、グローバル展開でもウィン―ウィンの関係を築ける。サムスンは端末も強く、全体として、きちんとしたサービスが作りやすい。一方で人工知能(AI)やネットワーク監視などは手がけておらず、我々の強みを生かせる」

 ―国連の持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を掲げていますね。
 「我々が目指す社会価値創造事業はSDGsに合致している。19年はラグビーのワールドカップ、その先には20年東京五輪・パラリンピックもある。顔認証システムをはじめ、我々の技術を世界にアピールするよい機会になる」

【記者の目】
 NECは18年末にデンマークのIT最大手であるKMDの買収を発表した。買収額は、1年前に傘下に収めた英ノースゲート・パブリック・サービス(NPS)の倍の約1360億円。「セーファシティーズ」と呼ぶブランドの下で、NECが描く成長戦略は海外でどう根付くのか。次の一手が注目される。
(斉藤実)

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