AIによるマシニングセンタの自動運転機能、誕生は“銅器”にあり

キタムラ機械、進化への意欲と顧客への思いが結実

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「Arumatik−Mi」と北村社長(左から2人目)とスタッフ
 作りたい部品のCADデータを読み込めば、後は自動で加工をする工作機械―。こんな革新的な製品を作りあげる構想を、北村彰浩キタムラ機械社長は2008年の時点で頭の中に思い描いていた。

 同年に独自のコンピューター数値制御(CNC)装置「Arumatik―Mi」を発表。IoT(モノのインターネット)という言葉がまだ広く使われていなかった時代に、ネット対応の機能を備えさせたり、スマートフォン感覚の操作を取り入れたりと、当時からさまざまな先進性を誇るCNCだが、真価は「Gコードレス」の実現だ。習得の難しいGコードを使わないプログラムで加工ができるようにしたのだ。

 この時から、北村社長は加工プログラムの作成自体をCNC内の人工知能(AI)が担うことで、加工の完全自動化へと発展させようとしていた。

 工学博士でもある北村社長は自らその機能の設計を手がけた。開発プロジェクトは最高機密。一部のスタッフが試作品の検証に携わっただけで、社内で北村社長が、加工作業の完全自動化という画期的な技術の実現に挑んでいることを知る者はほとんどいなかった。

 二つの危機感が北村社長の背中を押した。同社が本社を置く富山県高岡市は江戸時代から続く「高岡銅器」で知られる伝統工芸の街。

 しかし、近年は銅器の需要減や職人の高齢化で衰退しつつある。その状況を身近で見ているだけに「過去の成功にしばられず、イノベーションを進めていく必要性をしみじみ感じている」(北村社長)。

 もうひとつは工作機械の扱いの難しさが、中小製造業の後継者難を生じさせていることへの懸念だ。特に加工プログラムの作成は技能者の習熟が必要で負担も大きい。この問題の解決がモノづくり現場の人手不足解消につながるとの思いが、開発にまい進させた。

 進化への意欲と顧客への思いが、画期的な新技術を生んだ。
(文=富山支局長・江刈内雅史)
<製品プロフィル>
【AIによるマシニングセンタの自動運転機能「Auto―Part―Producer」】
AIによってマシニングセンター(MC)を自動運転する。CNC「Arumatik―Mi」のAIが加工対象物(ワーク)のCADデータをもとに機械部品などを加工する。加工プログラムはAIが自動で作るので、従来は技能者がCAMを用いて行っていたプログラムの作成業務が不要になり、製造現場の人手不足解消に寄与する。
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日刊工業新聞2019年2月7日

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