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“再始動”パイオニアを待ち受ける厳しい道のり

香港ファンドの下で生き残りかける
“再始動”パイオニアを待ち受ける厳しい道のり

森谷浩一パイオニア社長(左)、シェーン・プリディーク香港ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア日本代表

 パイオニアが生き残りをかけ外資ファンドのもとで再出発する。先週末に開催された臨時株主総会で香港ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアへの傘下入りが決まった。今後は人員削減などリストラで収益性の改善を急ぐとともに、地図やセンサーなど成長が見込める自動運転分野を伸ばし、巻き返しを図る。ただ次世代領域をめぐる競合との競争環境は激しさを増しており、完全復活への道のりは険しい。

 「運転資金を確保し再生に向けた一歩を踏み出せた。できるだけ早く、世の中の役に立つ製品やサービスを提供できる体制を築きたい」。パイオニアの森谷浩一社長は臨時株総後に開いた会見で経営再建への決意を改めて語った。

 パイオニアはベアリングから約1020億円の出資を受け、3月末にも同社の完全子会社になる。今春から2年かけ全従業員の15%に相当する約3000人の削減や生産・販売拠点の統廃合などを進める。

 構造改革で収益性の改善を急ぐ一方、パイオニアが復活に向け経営資源を集中させていくのが自動運転向けの技術。一つは子会社が手がける高精細地図、もう一つが「LiDAR(ライダー)」と呼ぶ高機能センサーだ。いずれも自動運転の実用化、高度化に欠かせない基幹技術で完成車メーカーの採用に向けた取り組みを加速する。

 地図やセンサー、長年蓄積した車の走行データを活用したソリューション事業にも力を入れる。事故が多発する地点を走行する際に音で注意を喚起するなど車の安全な走行や業務効率化に役立つ利点があり保険会社や物流会社などで採用実績が広がっている。

 ただ、カーエレクトロニクス業界はCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への対応に向け再編が活発化。アルパインは親会社のアルプス電気(現アルプスアルパイン)と経営統合し、クラリオンは日立製作所から独立し、仏内装部品大手フォルシアへの傘下入りを決めた。これに対しファンドの子会社になるパイオニアは「資金を得て急場をしのいだだけといっても過言ではない」(大手自動車部品メーカー首脳)。

 経営が悪化した要因について森谷社長は車のコネクテッド化など新潮流に対応するための「技術マネジメント力、コストマネジメント力が(他社より)劣っていた」と悔やむ。厳しい競争環境が続く中、変化に迅速に対応できる体制づくりが復活への第一歩となる。
(文=下氏香菜子)
日刊工業新聞2019年1月28日

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