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プロサッカーチームがデジタルを生かすべき理由

清水エスパルスがプラットフォーム構築、競技場をキャッシュレス化へ
プロサッカーチームがデジタルを生かすべき理由

清水エスパルスの本拠地「IAIスタジアム日本平」(写真提供:株式会社エスパルス)

 サッカーJ1の清水エスパルスを運営するエスパルス(静岡市、左伴繁雄社長、054・336・6301)は、日本IBMの支援により、ファンサービスの向上やクラブ運営の強化を目的とした「スポーツビジネスプラットフォーム」を構築した。ファン向けにスマートフォンのアプリケーション(応用ソフト)によるキャッシュレス決済サービスなどを順次導入する予定。

 スタジアムでのファンサービス向上の第1弾として、スマホアプリから座席にいながら飲食類を注文してキャッシュレスで決済を行えるようにする。事前に注文できるため混雑した行列に長時間並ぶ必要がなく、ファンの利便性が向上する。

 また、スポーツプラットフォームを支えるデータ基盤として、顧客データベースと販売管理システムを統合。応用プログラミングインターフェース(API)経由で顧客情報管理(CRM)やマーケティング分析システムなどと連携し、ファンの要望や行動に迅速にきめ細かく対応したサービスが可能になる。

 スポーツクラブは地域社会のエコシステムの中心として機能していくことが求められ、コンテンツとしての重要性が高まっている。また、スマホを中心としたコミュニケーションの時代にデジタルへの対応が強く求められており、クラブの歴史やストーリーをデジタル・プラットフォーム上に展開し、ファンや地域を結びつけていくことが重要となっている。試合や選手のデータ、ファンの購買データ、地域関連のデータなどの多種多様で膨大なデータを連携して利活用できるプラットフォームを構築することで、ファンサービスの向上や購買増加を図り、クラブ運営の強化につなげられる。

日刊工業新聞2019年1月17日



昨年はアクセラレータープログラムに挑戦


 清水エスパルスは2018年4月に日本IBMの協力を受け、ベンチャー企業との協業を目指すアクセラレータープログラム「SHIMIZU S‐PULSE INNOVATIN Lab.」を立ち上げた。Jリーグはファンの平均年齢が上昇傾向にあり、若年層のファン獲得は急務。エスパルスもそこに危機感を持っていた。また、エスパルスの売上高は長年30億―40億円程度で推移しており、恒常的に40億円超の売り上げを実現することで、チームの強化費などを増やしたい思いがあった。そこで、ファン層の拡大などに向けて外部との協業が必要と判断した。

 清水エスパルスを運営するエスパルス(静岡市清水区)経営戦略室の森谷理広報部長は「ベンチャーの知見や技術を取り込むことで(我々が気づいていないビジネスにおける)『清水エスパルス』のポテンシャルを発見できるのではないか」と期待する。また、協力する日本IBMの岡田明シニアマネージングコンサルタントは「静岡にはサッカーの文化が根付いている。その熱量をオープンイノベーションに生かすことで(新たなビジネスが生まれれば)、地域経済の活性化にもつながる」と力を込める。

 スタジアムでの新しい観戦体験やファン層拡大などをテーマに募集し、7月に5件を採択。それから10月までワークショップを5回開き、提案の事業性や実現性を検証してきた。そうした提案の中で、エスパルスは、観戦客がゴールを決める選手などを予想してポイントを投じ、正解して一定のポイントが溜まった場合には特別なイベントなどに招待する「スタジアム・ベッティング」や「キャッシュレスサービス」に可能性を感じており、これらについて事業化の検討を続ける。

ニュースイッチオリジナル記事「プロ野球・Jリーグチームがベンチャー協業、相次ぐ挑戦の理由と壁」から一部抜粋

葭本隆太
葭本隆太 Yoshimoto Ryuta デジタルメディア局DX編集部 ニュースイッチ編集長
清水エスパルスは昨年4月にベンチャー企業との協業を目指す「アクセラレータープログラム」を立ち上げ、収益の拡大などに向けた新サービスを模索していました。プラットフォームの構築はその延長線上にあるものです。清水エスパルスのようにプロスポーツチームが新たなサービスを立ち上げる動きが拡大しています。横浜DeNAベイスターズはその走りですが、埼玉県では自治体が音頭を取って県内のスポーツチーム(浦和レッズや大宮アルディージャ、西部ライオンズ)とベンチャーの協業を支援する取り組みも動いています。政府もスポーツビジネスを後押しする方針を示しており、今後、スポーツビジネスが活発化しそうです。

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