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この1年、止まってばかりだった「鉄道」の無力と努力

豪雪、地震、水害、台風・・・JR.各社が認識した課題とは
この1年、止まってばかりだった「鉄道」の無力と努力

山陽線の長期運休でJR貨物は迂回運転を実施した

 2018年は豪雪に始まり、大地震や集中豪雨、超大型台風といった多くの自然災害に襲われた。災害時の対応を通じて、公共交通としての鉄道の役割も問われた一年だった。

 1月、新潟県のJR信越線では大雪で列車が長時間立ち往生。2月には福井県のJR北陸線などが積雪のために数日間運休した。雪対策に万全なはずの豪雪地帯でも、平年を大きく上回る降雪に遭遇し、運行継続の判断や排雪対策などの再検討が余儀なくされた。

 6月に大阪府北部を襲った地震では、発生直後に関西の鉄道が運転を休止した。JR東海道線では運転を再開するまでに長時間を要した。道路の混雑で安全を確認する作業員の現場到着が遅れたためだったが、正確な再開見通しの発表や情報提供手段など改善すべき点は多く挙がった。

 6月末から続いた集中豪雨は、西日本を中心に広範囲に影響。特にJR山陽線の寸断は九州―本州間の鉄道貨物輸送を100日間止めた。代替輸送需要でトラックの傭車費は労働力不足を背景に高騰し、図らずもモーダルシフトの重要性を再認識する結果となった。JR貨物の真貝康一社長は「在来線の強靱(きょうじん)化が必要だ」と訴える。

 9月は大型台風が相次ぎ到来。関西で約4年ぶり、関東で初めて台風接近前に災害予防で広域に運転を取りやめる「計画運休」を実施した。歩くのにも困難なほどの強風が都心を襲い、判断は妥当だったが、翌朝の運転再開見通しが甘く、通勤客に混乱が生じた。JR東日本の深沢祐二社長は「情報提供、運転再開時の対応に課題があった」と総括した。

 公共交通機関には、利用客を安全に目的地まで輸送する責任がある。しかし自然災害による危険を前に、輸送サービスを止めるのは「身の安全を考えると致し方ない」(来島達夫JR西日本社長)ことであり、社会に広く理解が求められる。一方、鉄道事業者も利用客への正確かつ迅速な情報提供が必要だ。災害は今年に限った話ではない。
(文=小林広幸)
日刊工業新聞2018年12月19日

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