西日本豪雨で100日停止、JR貨物はどう信頼回復するか
減収規模は100億円超に
JR貨物は西日本豪雨による減収規模が100億円を超える見通しだ。基幹線の山陽線をはじめ、中国・四国地方の鉄道路線が複数箇所で寸断され、九州と本州各地を結ぶ貨物列車は100日間、運転できなかった。長期の輸送機能不全は、企業の生産活動に大きな影響を与えた。運転手不足を背景に、鉄道貨物への期待が高まる中、再び荷主からの信頼を得るためにも、安定輸送体制の見直しを急ぐ。
山陽線を通過する貨物はJR貨物全体の約3割を占める。不通で運べなかった荷物量は163万3200トン。不通期間中に、JR貨物や利用運送会社などが用意できた代行輸送力は最大で平常時の26・6%にとどまった。
JR貨物が荷物を運べない状態に陥り、荷主は自ら代替手段を探したり、生産体制を変えたりして対応せざるを得なかった。運転再開後は日ごと荷物引受量が戻りつつあるが、一部で鉄道離れも発生している。「営業も客先でいろいろ言われている。一生懸命やって逸走(客の減少)を、どれだけ少なくできるかだ」(首脳)。区間によっては内航船にシェアを崩され始めた。
一方でモーダルシフトの受け皿として、鉄道への期待は変わらず大きい。トラックによる代行輸送を実施したことで、運転手の労働環境改善や運賃高騰という課題にも直面し、あらためて過度にトラックを頼れない現実も浮き彫りになった。
JR西日本の協力で実現した山陰線経由の迂回(うかい)輸送は、上り下り計62本を運転。輸送できたのは12フィートコンテナ換算で計2075個にすぎないが、危険物や大型コンテナなど鉄道でしか運べない貨物の輸送に成果をあげた。
鉄道貨物輸送は、大量輸送と環境配慮に加えて定時性も訴求してきた。最近は自動車部品の長距離輸送で採用が広がり、ジャストインタイム(JIT)物流の一翼も担う。長期の輸送機能不全は、モノづくりのリスクにもなりかねない。
こうした懸念に対して真貝康一社長は「今後も災害が起きる前提に立って、代行輸送力の確保に取り組む」と応える。以前からBCP(事業継続計画)を備え、台風や降雪、地震による被災など多くのケースで発動して、顧客への影響を最小限に抑えてきた。だが、今回のように鉄路の寸断が広範囲、複数箇所にわたるケースは前例が極めて少ない。
社内では現在、全国各地で広範囲に災害が発生した際の代行体制について、洗い出しを進めている。ある地域が被災した場合に、いつまでに何割の代行輸送力を用意できるか。船・トラックの手配や迂回輸送の可能性などを、あらかじめ検討して早期に対応するのが狙いだ。対策を顧客に提示し、理解を求めていくことが、信頼回復への第一歩となる。
(文=小林広幸)
山陽線を通過する貨物はJR貨物全体の約3割を占める。不通で運べなかった荷物量は163万3200トン。不通期間中に、JR貨物や利用運送会社などが用意できた代行輸送力は最大で平常時の26・6%にとどまった。
JR貨物が荷物を運べない状態に陥り、荷主は自ら代替手段を探したり、生産体制を変えたりして対応せざるを得なかった。運転再開後は日ごと荷物引受量が戻りつつあるが、一部で鉄道離れも発生している。「営業も客先でいろいろ言われている。一生懸命やって逸走(客の減少)を、どれだけ少なくできるかだ」(首脳)。区間によっては内航船にシェアを崩され始めた。
一方でモーダルシフトの受け皿として、鉄道への期待は変わらず大きい。トラックによる代行輸送を実施したことで、運転手の労働環境改善や運賃高騰という課題にも直面し、あらためて過度にトラックを頼れない現実も浮き彫りになった。
JR西日本の協力で実現した山陰線経由の迂回(うかい)輸送は、上り下り計62本を運転。輸送できたのは12フィートコンテナ換算で計2075個にすぎないが、危険物や大型コンテナなど鉄道でしか運べない貨物の輸送に成果をあげた。
鉄道貨物輸送は、大量輸送と環境配慮に加えて定時性も訴求してきた。最近は自動車部品の長距離輸送で採用が広がり、ジャストインタイム(JIT)物流の一翼も担う。長期の輸送機能不全は、モノづくりのリスクにもなりかねない。
こうした懸念に対して真貝康一社長は「今後も災害が起きる前提に立って、代行輸送力の確保に取り組む」と応える。以前からBCP(事業継続計画)を備え、台風や降雪、地震による被災など多くのケースで発動して、顧客への影響を最小限に抑えてきた。だが、今回のように鉄路の寸断が広範囲、複数箇所にわたるケースは前例が極めて少ない。
社内では現在、全国各地で広範囲に災害が発生した際の代行体制について、洗い出しを進めている。ある地域が被災した場合に、いつまでに何割の代行輸送力を用意できるか。船・トラックの手配や迂回輸送の可能性などを、あらかじめ検討して早期に対応するのが狙いだ。対策を顧客に提示し、理解を求めていくことが、信頼回復への第一歩となる。
(文=小林広幸)
日刊工業新聞2018年10月19日