製造業への再就職を支援する“ハロトレ”、女性専用コースが人気の理由

人手不足だけど即戦力が欲しい・・・雇用のミスマッチ解消へ

多い40―50代


 製造業に再就職を希望する人材を支援する公共職業訓練(ハロートレーニング)の受講者数が高水準で推移している。全国平均の定員充足率は85%、技能を学んだ修了生の就職率は90%超。人手不足が続く中、企業が求める人材と働き手の要望が合わない雇用のミスマッチ改善の一翼を担っている。中でも人気は女性専用のコース。結婚、出産などライフスタイルの変化を機に働き方を変え、モノづくりに挑む受講者が相次いでいる。製造業が盛んな長野県でその取り組みを追った。

CAD基礎学ぶ


 「図面に照らし実際にノギスを使って測るポイントは何だろう」―。ポリテクセンター長野(長野市)が運営する女性専用の「CADものづくりサポート科」の教室内には受講生の明るい声が響く。

 製図、計測器の使い方、CADデータの活用、品質・生産管理、などを半年かけて教えるコース。柔軟性、細やかさといった女性ならでは強みを生かし、モノづくりを支える人材を育てている。ポリテクセンター福井に次ぐ全国2番目の女性専用コースとしてポリテク長野にも2016年に開講。18年度上期は13人が受講している。

働き方の転機に


 前職は小売業の接客、営業などさまざま。結婚を機に夫の郷里の長野県に転居してきた28歳の女性は「周囲の勧めでモノづくりに興味を持ち、機械部品の製造に携わりたいと思った」と受講の理由を話す。宝飾店の店長を務めた経験もあるが、流通業は土日出勤が多い。「今後の出産と育児を念頭に、休みをとりやすい製造業に就こうと考えた」。

 同サポート科の受講生を年齢層別にみると全体の53%が40―50代。他の6科を合わせた全体平均に比べ13ポイントも高い。年齢的に再就職は決して容易ではないが、手に職をつけて生活を安定させたいと願う受講者は多い。

 給食の配膳などに勤務経験のある女性は47歳。「立ち仕事で足を痛めてしまったが、働く意欲に変わりない」。工業製品の検査、組み立てなど、座ってできる仕事を求める中、紹介されたのが同サポート科だった。

「即戦力助かる」


 他県と同様に長野でも人手不足は深刻。中でもモノづくり産業で求人ニーズは高い半面、雇用のミスマッチが存在する。異分野への挑戦に二の足を踏むあまり求職者は増えない。一方、即戦力を望む求人側は「ある程度の知識・技能を身に付けた人材」を要件にしていて、採用のハードルが高くなっているのがミスマッチの要因という。そこで求人求職の対象として男女にかかわらず、期待されるのがポリテクセンターによる就職前の職業訓練だ。

 木工機械を手がける信越工機(長野市)の従業員9人のうち、5人がポリテクセンター長野の男性修了生。人材教育の担当者も確保できず教育の時間もさけない。そんな同社にとって「基礎から指導を受けたポリテクの受講生は即戦力として助かっている」(千野義文専務)。

 「長野のモノづくりを後世に残す手伝いがしたい」。そう語り、課題に取り組む受講者らの目は輝いていた。
(文=長野支局長・縄岡正英)
          

日刊工業新聞2018年11月29日

  

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