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次期「マツダ3」公開、圧縮着火入れた夢のガソリンエンジン搭載

次世代商品群の第1弾、30日からロスショーで初披露
 マツダは28日、小型車「マツダ3(日本名アクセラ)」の次期モデル(写真)を公開した。「スカイアクティブ・テクノロジー」と呼ぶ自動車技術を搭載した現行車に次ぐ、次世代商品群の第1弾。30日から一般公開される米ロサンゼルスオートショーで初披露する。2019年初頭から北米を皮切りに順次発売、年間35万台の世界販売を目指す。

 「魂動(こどう)デザイン」と呼ぶデザインテーマを深めた。車体側面への光の映り込みを考慮した繊細な造形とし、セダンとハッチバックでデザインテイストに違いを持たせた。エンジンはガソリン、ディーゼルに加え、ディーゼルエンジンの圧縮着火方式を一部取り入れた新しい燃焼方式のガソリンエンジン「スカイアクティブ―X」の3方式をそろえる。

(日刊工業新聞2018年11月29日掲載)

モーターショーで人だかりの夢のエンジン、その仕組みとは?


(日刊工業新聞2017年10月27日掲載)
※肩書き、内容は当時のもの

 電動化一色となった東京モーターショーの会場で、マツダの展示が異彩を放っている。次世代ガソリンエンジン「スカイアクティブ―X=写真」の前には人だかりができ、初お目見えとなった“夢のエンジン”の実像を見極めたいという人たちの熱気であふれている。

 「ガソリンの希薄混合気を圧縮着火させる技術の実用化に、世界で初めてめどを付けた」。小飼雅道社長はモーターショーのプレゼンで胸を張った。

 スカイアクティブ―Xが注目を集めるのはその燃焼方式にある。ガソリンを、通常の火花点火ではなく、ディーゼルエンジンのように圧縮着火させるHCCI(予混合圧縮自動着火)と呼ばれる燃焼を実現したからだ。HCCIは燃料の割合をきわめて薄くした混合気を自己着火させて、燃費と環境性能を両立させることができる。理想の燃焼方式といわれたが、温度など一定の条件でしか実現できず、通常の火花点火との切り替えが難しいことなどから、これまで実用化できなかった。

 マツダが実現した「SPCCI(スパークプラグ制御圧縮着火)」という方式では、スパークプラグによる火花点火で生じる火の玉が膨張する力で圧縮着火を起こす。いわば逆転の発想だ。従来のスカイアクティブガソリンエンジンに比べ20―30%低燃費化でき、ディーゼルエンジン並みの出足の良さを実現したという。

 気になるのは価格だが、マツダの幹部は「通常のガソリンエンジンに三つの補機を付け加えただけの構成。それほどコストアップにはならない」と言う。

 今回のモーターショーで単体のエンジンを出品した国内の乗用車ブランドは、マツダ以外ではレクサスとスズキのみ。電動車シフトの中で、エンジンの新技術という点では寂しい展示会だった。そうした中でマツダの展示は異例で、注目を集めるのも当然といえる。今後、量産化に向けてどう品質や性能をチューンアップしていくかという局面に入る。

2017年開催の東京モーターショー

担当役員が語り尽くす、進化するエンジン


マツダ常務執行役員・広瀬一郎氏
(日刊工業新聞2018年4月6日掲載)
※肩書き、内容は当時のもの

 ―通常のガソリンエンジンのような火花点火(SI)ではなく、ディーゼルエンジンのように圧縮着火(CI)する「スカイアクティブX」エンジンを2019年に出します。開発状況は。

 「量産仕様を確立させる最終段階だ。昨秋試乗いただいた時に残っていた音やショックをなくし、(既存エンジン比最大20―30%改善という)燃費性能を極めようとしている」

 ―理想の燃焼とされる「HCCI(予混合圧縮着火)」と、今回開発した「SPCCI(火花点火制御圧縮着火)」との違いは。

 「両者は兄弟のようなもの。HCCIは均質に混ぜたごく薄い混合気をCIする。だが実現できる条件が非常に狭くHCCIだけを維持するのはほぼ不可能。SIとの切り替えに苦労してきた」

 「一方、SPCCIはSIでできるほんの少しの圧力上昇を使ってHCCIの温度や圧力を実現する。少しだけ濃い混合気をSIすると、火炎伝播(でんぱ)せずに少し膨張し、周りの薄い混合気に圧力を加えてHCCIの条件を作る。同じシリンダーにSIとCIが混在しており、CIの割合が多いほど燃費がよい」

 ―いかに最適な燃焼に近づけましたか。

 「難しいのが、どうやって一番欲しいタイミングでプラグの周りだけに少し濃い混合気を持っていくか。最初ごく薄い混合気を吹き、次に濃いのを吹いてスワールという渦巻き気流に乗せて、ちょうどプラグの周りにきたころに点火する。センサーで見ながら必要な圧力を瞬時に計算し、燃料噴射弁も進化して相当な短時間で噴射できるようになったことで実現できた」

 ―熱効率は公表しないんですか。

 「ピンポイントの最大熱効率を競う競争に巻き込まれたくない。むしろ幅広い負荷領域で高い熱効率を持つエンジンを目指す。そこにごく小型のモーターを併用したマイルドハイブリッド(HV)で、ストロングHVと同等の効果を出したい。大きなエンジンと大きなモーターを使うストロングHVは車2台分を1台に詰め込んだようなもの。車のみの燃費は良くても社会的・環境的負荷は大きい」

 ―ディーゼルエンジンへの逆風が最近強まっています。マツダは進化した第2世代を20年に出すようですが。

 「ディーゼルへの反応は報道と実態に落差があり水面下では欧州勢も開発を加速している。カギとなる燃料噴射技術を改善することで効率も排ガス性能もまだまだ高められる」

【記者の目/走りの良さ・燃費 両立カギ】
 内燃機関の進化は限界を迎えつつあるという見方も強いが、広瀬氏は熱効率100%のエンジンがない以上、進化に終わりはないと断言する。独自路線を怖がらず、むしろ突き進むこの頑固さがマツダの魅力。当面は、スカイアクティブX搭載の量産車がどれだけ低燃費と走りの良さを両立できるかの成否が焦点となる。(清水信彦)

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