計画目白押しの月・火星探査、日本の強みは?
技術生かし他国をけん引
月や火星、さらに遠い宇宙へと人類の活動範囲が広がりつつある。遠い宇宙への足がかりとするため、米国は月の近くに有人拠点を2020年代に構築し、30年にも月面に人を着陸させようとしている。国際宇宙探査に向けた動きが活発化する中、日本は月や火星を含む太陽系科学探査の戦略を科学者だけでなく国際的な視野から国のリーダーシップによって策定することが求められる。
3月、宇宙探査に関する閣僚級国際会議「第2回国際宇宙探査フォーラム(ISEF2)」が東京で開かれた。その後、国際宇宙探査への機運が高まり、月・火星探査の議論が具体化している。現在、内閣府宇宙政策委員会では主に月や火星への科学探査に関し議論している。
月探査に関しては宇宙航空研究開発機構(JAXA)が07年打ち上げの月周回探査機「かぐや」で月軌道上からの観測を実施。月南極の氷が宇宙機の燃料として使える可能性を示した。今後、誤差100メートル以内のピンポイント着陸を目指す月着陸実証機「SLIM(スリム)」の月面着陸や月極域(北極・南極)での資源の可能性を検討する「月極域探査」、月面を移動し大量の試料を地球に持ち帰る計画「HERACLES(ヘラクレス)」を予定する。一方、火星関連では、24年度の打ち上げ予定の「火星衛星サンプルリターンミッション(MMX)」が控えている。米国の火星試料サンプルリターン計画と合わせ、火星やその衛星の形成過程の謎を明らかにする。月や火星への無人探査は将来の有人月・火星探査の知見として役立つだろう。
こうした計画の遂行に当たり、日本の得意技術や獲得すべき技術の研究開発を、JAXAが大学や企業などと連携し進めることが重要だ。内閣府宇宙政策委員会の資料では具体的な技術として、目標天体からの試料を持ち帰るために入れるカプセルの技術や画像処理解析などでの航法誘導技術などを挙げている。さらに小委員会の議論の中で「優先的に開発する技術として小型探査機の開発を進めることは効果的」という意見も出された。そのために耐低温姿勢制御用推進系技術や安定性を確保した半永久的発電技術などを挙げている。
米国が掲げる月近傍拠点構想をはじめ、国際探査の動きが活発化している。日本が蓄積してきた技術の強みを生かし、科学探査分野を含む宇宙分野で他国をけん引することが求められる。
(文=冨井哲雄)
3月、宇宙探査に関する閣僚級国際会議「第2回国際宇宙探査フォーラム(ISEF2)」が東京で開かれた。その後、国際宇宙探査への機運が高まり、月・火星探査の議論が具体化している。現在、内閣府宇宙政策委員会では主に月や火星への科学探査に関し議論している。
月探査に関しては宇宙航空研究開発機構(JAXA)が07年打ち上げの月周回探査機「かぐや」で月軌道上からの観測を実施。月南極の氷が宇宙機の燃料として使える可能性を示した。今後、誤差100メートル以内のピンポイント着陸を目指す月着陸実証機「SLIM(スリム)」の月面着陸や月極域(北極・南極)での資源の可能性を検討する「月極域探査」、月面を移動し大量の試料を地球に持ち帰る計画「HERACLES(ヘラクレス)」を予定する。一方、火星関連では、24年度の打ち上げ予定の「火星衛星サンプルリターンミッション(MMX)」が控えている。米国の火星試料サンプルリターン計画と合わせ、火星やその衛星の形成過程の謎を明らかにする。月や火星への無人探査は将来の有人月・火星探査の知見として役立つだろう。
こうした計画の遂行に当たり、日本の得意技術や獲得すべき技術の研究開発を、JAXAが大学や企業などと連携し進めることが重要だ。内閣府宇宙政策委員会の資料では具体的な技術として、目標天体からの試料を持ち帰るために入れるカプセルの技術や画像処理解析などでの航法誘導技術などを挙げている。さらに小委員会の議論の中で「優先的に開発する技術として小型探査機の開発を進めることは効果的」という意見も出された。そのために耐低温姿勢制御用推進系技術や安定性を確保した半永久的発電技術などを挙げている。
米国が掲げる月近傍拠点構想をはじめ、国際探査の動きが活発化している。日本が蓄積してきた技術の強みを生かし、科学探査分野を含む宇宙分野で他国をけん引することが求められる。
(文=冨井哲雄)
日刊工業新聞2018年11月8日