人工衛星の衝突事故、補償はどうなる?

宇宙ビジネスの参入企業は増えているが、環境整備は不十分

 新たな宇宙ビジネスが立ち上がる中、日本の法整備が追いついていない。人工衛星を打ち上げ運用するビジネスに加え、近年はロケットや衛星の残骸であるスペースデブリ(宇宙ゴミ)の除去、軌道上の衛星を修理するサービスに取り組む企業が現れている。新しいビジネスに期待が高まる一方で、軌道上の衛星同士の衝突事故を引き起こす可能性が今後高まると指摘される。政府は法制面の検討を始めた。

地球を観測


 国内外では、小型衛星を大量に軌道投入し地球をくまなく観測する「衛星コンステレーション」を利用したサービスに注目が集まる。日本では宇宙ベンチャーのアクセルスペース(東京都中央区)が2022年までに100キログラム程度の超小型衛星50機を打ち上げる計画が進行中。地球を衛星群で毎日観測し農業や物流などのビジネスに役立てられると期待される。

宇宙ゴミの除去


 衛星群を利用したビジネスの広がりとともに、それをサポートするビジネスも生まれている。特に宇宙ゴミの除去サービスでは、日本発ベンチャーのアストロスケール(シンガポール)が気を吐く。宇宙ゴミを取り除くための超小型実証衛星を19年に打ち上げる計画だ。

ルール不十分


 法制面の検討が必要なのは、従来にも増して大量の衛星、特に小型の衛星が宇宙空間で活動するにもかかわらず、その基本的なルールや環境整備が十分でないからだ。宇宙ゴミの除去では、軌道上の宇宙ゴミに衛星で近づき捕獲、その後大気圏に突入し宇宙ゴミを焼却するという工程が必要になる。

こうした運用で別の衛星との衝突事故を引き起こす可能性が懸念されている。

 英国やフランスは、衛星同士の衝突事故による損害賠償に対し一定の政府補償を行う制度を導入済み。一方、米国や日本では打ち上げによる地上での損害以外には政府補償制度が整備されていない。

 政府は内閣府宇宙政策委員会宇宙法制小委員会の初会合を9月末に開催。今後、同小委員会を18年度内に複数回開催し、人工衛星を使った新しいビジネスを支える法制面での課題や軌道上損害に対する政府補償制度の必要性などを議論する。

 アクセルスペースやアストロスケール以外にも、国内では多くの宇宙ビジネスが生まれる可能性を秘めている。

 ベンチャー勃興のチャンスをつぶさないためにも、環境整備が急がれる局面を迎えている。
(文=冨井哲雄)

日刊工業新聞2018年10月12日

  

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