トヨタが世界で進める、販売戦略の再構築に迫る

先手を打ち、クルマ大変革に備える

 トヨタ自動車が販売台数の維持・拡大に向けた戦略を練り直している。各国・地域の状況に即した活動を徹底するためで、国内では長年の懸案だった販売4チャンネルでの全車種の併売も決めた。世界的に自動車を所有しないで利用するシェアリングが普及すれば、クルマの販売手法なども変化に迫られる。足元で業績が堅調なトヨタは、スピード感を持って先手を打つ。

 「すべての市場で収益と台数を確保し、新技術を普及させる力が非常に重要だ」。都内で6日に開いた2018年4―9月期連結決算の会見で販売戦略を説明したディディエ・ルロワ副社長は力を込めた。

 収益は「体力」、台数は「勢い」と表現し、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への対応を迫られる「100年に1度」と言われる大変革期を迎え、従来以上に「体力」と「勢い」、そして「新技術の普及」の重要性を強調する。

 販売力強化のための具体的な活動として、ルロワ副社長は「現地現物による、即断即決の活動・対策の実施」「専門部署による人材育成」「ブランドの強化」「ライフタイムカスタマーづくり」の四つを挙げた。

 実際に成果を上げた事例として紹介したのはタイだ。トヨタは12年にピックアップトラックでタイ市場のシェア39%を占めていたが、17年には30%にまで落ち込んでいた。

 そこで、四つの活動を実践。タイ全域にある販売店155店を2カ月以上かけて回って現地現物で課題を確認し、即断即決で課題解決策を実行した。

人材育成では優秀な活動事例を全販売店で共有。ブランド力の強化では特定顧客向けの特別仕様車を用意し、大口顧客向けには利便性を高めるためのワンストップのアフターサービスをモデル店舗で実施した。

 その結果、ピックアップトラックのシェアが18年1月の26%から徐々に上昇し、9月には38%まで回復したという。トヨタは基本に立ち返ることで成果を残した。そのほか、市場が拡大する中国では、地方モーターショーへの出展回数を増やしたほか、ハイブリッド車(HV)のイベントを年間200回程度開き、試乗会などを積極化し、順調に販売台数を積み上げている。

 米国市場については北米担当のジム・レンツ専務役員が「全体として消費者のマインドは良い」と、ピックアップトラックやスポーツ多目的車(SUV)といった売れ筋車種の供給を増やすことなどで収益改善に取り組む姿勢を示した。

国内の危機感、全車種併売・シェアリング導入


 「先延ばしにはできない」―。トヨタ首脳は国内のトヨタ販売店で22―25年をめどに全車種の併売に乗り出すことについて、強い意志を示す。トヨタは「トヨタ店」や「カローラ店」など販売4チャンネルでそれぞれ専売車種をそろえ、販売店である程度のすみ分けを実施してきたが、市場縮小に直面して方針を大きく転換する。

 併せて19年に東京で先行して本格導入するのが、販売店の試乗車などを用いるシェアリングサービスと、自動車の月利用の定額サービス(サブスクリプション)だ。

 国内販売担当の佐藤康彦専務役員は「25年には成り行きでは国内年間販売台数は120万台になる」と危機感を隠さない。トヨタが国内年間販売台数でこだわる数値は150万台。販売店の自助努力や新たなサービスの提供により、市場の活性化や買い替えサイクルの前倒しを促したい考えだ。

 トヨタが1カ月前にソフトバンクグループ(SBG)と移動サービス事業で業務提携したのも、市場変化を見越してのもの。持ちかけたのはトヨタ側だ。

 トヨタも出資し、SBGが筆頭株主のライドシェア(相乗り)大手の米ウーバー・テクノロジーズやシンガポールのグラブなどとの連携も視野に、乗り物のサービス化「MaaS(マース)」を本格展開する。20年代前半には自動運転などを備えたMaaS専用の次世代電気自動車(EV)「eパレット」を導入し、グローバル展開を狙う。
茨城県つくば市のトヨタ販売店

販売目標据え置き、中国攻勢・北米テコ入れ


トヨタは6日発表の好調な決算を受けても、連結販売台数目標は据え置いた。「売上高は三角から丸(の間)。まだまだ顧客に提供できる」(小林耕士副社長)。販売力強化は重要課題の一つだとの認識だ。特に売り上げは伸ばしながら利益を落とした米国と、成長市場である中国の動向が注目だ。

 18年4―9月期連結決算で、北米での連結販売台数は前年同期比1万5000台増の141万1000台、売上高は同3・8%増の5兆4275億円となったが、営業利益は同23・3%減の1109億円に沈んだ。ピックアップトラックやSUVの販売は好調だが、為替や原材料費上昇、原価改善幅の縮小などが響いた。

 白柳正義専務役員は「重点モデルへの注力を進めている」と説明。レンツ専務役員も「足元の稼働は好調。北米にコスト競争力があることを示さないといけない」と、さらなる取り組みを強調する。

 加えてアジアが伸びた。18年4―9月期はアジア市場の連結販売台数が前年同期比6万7000台増の81万1000台に増加。売上高は同6・1%増の2兆6349億円、営業利益は同32・3%増の2834億円と伸びた。通期では中国などを含む総販売台数も1050万台で据え置く。

 米中貿易摩擦など見通しは不透明だが、ルロワ副社長は「長期的には成長する。グローバルトヨタにとって重要。次のステップを考えないといけない」と力を込める。

 同社の販売戦略が功を奏すかは、今後の実績に表れそうだ。
(文=名古屋・今村博之、同・政年佐貴恵)

日刊工業新聞2018年11月7日

  

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