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子供服のミキハウス、アジアの富裕層ニーズは70年代から狙っていた

三起商行・木村皓一社長に聞く
子供服のミキハウス、アジアの富裕層ニーズは70年代から狙っていた

厳選した素材でつくられた服や雑貨が並ぶミキハウスの店舗(銀座松屋内)

 ベビー・子ども服ブランド「ミキハウス」を展開する三起商行(大阪府八尾市、木村皓一社長、072・920・2111)。1995年に約3%にすぎなかった外国人向け販売は、訪日外国人客(インバウンド)需要の拡大で、現在50%と急速に伸びた。「これは、偶然の所産ではない」と木村社長。創業した70年代の第二次ベビーブームから、次の市場としてアジアの富裕層を見据えてきた木村社長にその軌跡を聞いた。

―70年代は国内ベビー・子ども服市場がまだ成長していたころです。

「将来の第三次ベビーブームも期待したいところだったが、社会や文化の変化で国内出生数が減少していくことは目に見えていた。一方で、経済成長に伴い、アジア各国の富裕層のニーズがいずれ市場となり得ることも見えていた。アジアの富裕層の需要を獲得するには、世界的なブランド力が不可欠だ。このため、80年代から海外法人設立や現地百貨店への出店を始めた。現在15カ国に店舗を持っている」

―欧米の名門百貨店に出店しています。

「経済成長の過程で、アジアの旅行客は、まずパリやロンドン、ニューヨークといった欧米の都市の名門百貨店にいく。そこにミキハウスがあって、ブランドが認知されることが重要となる。購入者が品質の高さを実感して、それがSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じて広まり、現在のインバウンド需要につながっている。国内百貨店のミキハウス店舗は、多いところで80%がインバウンド向け販売だ」

―ブランドを流行で終わらせない秘訣(ひけつ)は。

「品質とサービスだ。三起商行は工場を持たないファブレスメーカーだが、糸の選定から織り、縫製などすべてを高い基準でプロデュースする。また、出産を機に退社したOG社員を、子育てが一段落してから再雇用する制度があり、商品企画や販売で約300人が活躍している。ユーザーとして、商品を実際に子どもに着せ、洗濯し続けた経験から来る言葉や考えは非常に役に立つ」

―今後の展開は。

「付加価値をさらに高め、給料面や働く環境で社員満足度が極めて高い会社にしたい。日本では“良いモノを安く”を志向する企業が多い。決してそれを否定はしないが、ミキハウスは“良いモノを高く”でいく。価格競争には加わらない。このため、品質もサービスも1番でなくてはならない」

三起商行社長・木村皓一氏

【チェックポイント/セールスの王道を歩む】
 厳選した素材と細やかなデザインは、服だけでなく靴なども同様。特殊な加硫製法でゴムに熱と圧力を加えて屈曲性を持たせたソールのベビーシューズは、SNSで中国の富裕層に急速に広まった。人件費や素材価格の上昇で複数回値上げするも、販売数は減少していないという。ブランド構築のための布石や仕掛けを続け、品質で真価を顧客に認めてもらう―。セールスの王道を長らく歩み続けたからこそ現在のポジションがある。
(文=坂田弓子)
日刊工業新聞2018年10月30日
葭本隆太
葭本隆太 Yoshimoto Ryuta デジタルメディア局DX編集部 ニュースイッチ編集長
同社は海外事業をさらに強化する方針。ニュースイッチで以前に紹介した記事(https://newswitch.jp/p/14433)によると、中国を中心に、海外の店舗を2021年に100店(現在45店)まで増やし、輸出も現状比4倍の100億円に拡大するそうです。

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