太陽光時代の要、“仮想発電所”の実用化近づく

国や企業が実証急ピッチ

 九州電力は13、14の両日、太陽光発電所からの送電を一時停止する「出力制御」を実施した。太陽光パネルからの電力供給が需要を超えてしまい、需給バランスが崩れて大規模停電が起きる事態を回避した。一方、国内外で出力制御の影響を最小限に抑える技術実証が進んでおり、再生可能エネルギーを主力電源化する国の方針に従った実用化が期待される。

 九電によると13日は32万キロワット分、14日は52万キロワット分の太陽光発電所が稼働を停止し、出力制御に協力した。九電の予測では13日13時の太陽光発電からの供給が594万キロワットに達し、他電源からも含めた総供給力は1293万キロワットになる。家庭などで使う電気需要828万キロワットを超えてしまう。供給過剰は送配電設備への負荷となり、停電の危険が高まる。

 そこで火力発電から供給を減らしたり、余った電気を本州へ送ったりしたが供給オーバーが避けられず離島以外では初となる出力制御に踏み切った。

 九電管内では供給を調整しづらい原子力発電が稼働しており、今後も太陽光の停止が必要となりそうだ。ただ、協力して送電を止めた太陽光発電事業者は売電収入が減ることになる。

 こうした課題解決のため、経済産業省や企業は太陽光発電の大量導入時代を見すえ、スマートグリッドの研究・開発、実証を進めてきた。実用化に近づくのが、地域にある小さな電源をIoT(モノのインターネット)で束ねて火力発電所のように扱う「仮想発電所(VPP)」だ。

 VPPは太陽光や風力の発電が増えると、家庭などにある蓄電池に充電を指示する。送電網に余った電気を蓄電池が充電して吸収するので需給バランスが保たれる。経産省は20年ごろの実用化を目指して大規模実証を展開しており、東京電力やソフトバンクのグループが参加している。

 日立製作所は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の実証事業に参加し、米ハワイ州マウイ島でVPPを試した。16年度までの実証で、風力発電からの電力供給が増える夜間、家庭に駐車中の電気自動車(EV)の蓄電池に充電を指示できる技術を確立できた。実用化できればEVの蓄電池を電力の需給調整に使える。

 中小企業も新技術を提案する。松尾建設(佐賀市)は太陽光発電所からの送電量を調整できる技術を開発した。現状の出力制御だと送電はゼロとなるが、同社の技術があれば送電量を半分や8割に設定でき、発電した電気のムダを減らせる。エネルギーを有効活用するためにも、こうした技術の早期実用化が求められる。
(文=松木喬)

日刊工業新聞2018年10月16日

江原 央樹

江原 央樹
10月20日
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地域にある小さな電源をIoT(モノのインターネット)で束ねて火力発電所のように扱う「仮想発電所(以下、VPPと言う)」という概念について、一般の方には少々わかりにくいため簡単に説明する。AとBの電気の消費者がいたとして、同時に同じ量使う場合は、2基の発電設備が必要になるが、タイミングをずらして利用することができれば1基で済み、また、そもそもAやBあるいは別のCが非常用等未利用の発電・蓄電設備を保有していればその設備の電気も最大限利用することによって発電設備への投資が抑制できる。よって、現状の電気の供給能力を超える需要が生じた場合に需要のタイミングをずらしたり、地域の利用可能な発電設備や蓄電設備等で賄うことで需要と供給を一致させるシステムがVPPであり、その構築に向けた技術実証を現在、国を挙げて取り組んでいる。なお、本記事にもあるように、九州では天候によりその供給が左右される再生可能エネルギーによる発電設備が多く導入されているため、一時的に供給量が需要量を上回る状況が生まれてしまい停電の恐れがある。このような場合には、VPPの技術を活用しながら供給量抑制のために発電を停止するか、電気の需要を新たに創ったり貯める必要が出てくる。今後、貯める手段として注目されているのが“2009年から余剰買取制度開始により導入が進んできた10kW以下の家庭用太陽光発電設備に今後搭載される蓄電池”ならびに“普及が加速する電気自動車”である。10年の余剰買取が終わる家庭は、2019年だけで全国で5 0万件以上と言われており、単純に平均的な導入設備容量約4kWで掛け合わせると200万kW、平成27年度の電気自動車の保有台数(プラグインハイブリッド、燃料電池車含む)13.8万台(次世代自動車振興センター統計)に電気自動車(日産リーフ)の蓄電池容量24kWを掛け合わせると512万kWであり、合計712万kW貯める能力が生まれる可能性がある。これは北海道電力、北陸電力、四国電力それぞれの設備容量に近い値であり、投資抑制の観点と電力の安定供給の観点の両面から活用実現への期待が高まっている。

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