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新入社員の退職が減った!“親子参観”で変わる働き方とは?

効果は離職防止だけではない
新入社員の退職が減った!“親子参観”で変わる働き方とは?

入社時に各部署を経験したことで、さまざまな作業に対応できる(加工品の検査を行う社員)

**「親子参観」で若手離職防ぐ
 中田製作所(大阪府八尾市、中田寛社長、072・996・8621)は、アルミニウム素材に特化した精密部品加工を得意とする。3年前から新入社員の親を会社に招く「親子参観」を始めた。会社側が親と面識をつくり、会社の考えを伝えることで、新入社員の離職防止につなげている。中田社長に親子参観の内容や取り組みによる効果などを聞いた。

―親子参観の内容は。

「6月末に、4月入社の新入社員の両親を会社に招いている。会社紹介や社内見学の案内役は新入社員が行っている。その後、居酒屋で懇親会も開いている」

―その狙いは。

「親との関係構築だ。新入社員が親に『会社を辞めたい』と仕事の愚痴を話すと、会社と面識のない親は会社側の話を聞かずに、子どもの退職を応援してしまう。参観を通じて、親に経営者の考えを伝えることで、会社を知ってもらっている。親子参観開始前に採用した新入社員4人は全員辞めてしまったが、開始3年間で採用した8人のうち辞めたのは1人だけだ」

―新入社員に、配属されない部署を経験させる狙いは。

「親子参観日に、社内の各部署のことを説明してもらうために、各部署を1―2週間ずつ体験してもらっている。これはまた、入社して一つの部署に配属されると他部署のことが分からず、むちゃな仕事を出してしまうことがあることへの対処でもある」

―その取り組みにより部署間の会話が増えたそうですね。

「趣旨を伝えるだけで、求める加工品をつくれるようになった。随時指示しなくても、加工に必要なプログラムを社員自ら考えている。さらに、他部署の仕事がしやすいよう工夫してくれるようになった」

―2年前から生産計画立案ソフトを導入しました。導入による加工現場の変化は。

「ソフトで受注や納期が見える化したことで、中長期的な仕事の見方ができるようになった。作業者は1カ月先の仕事内容を踏まえ、作業手順を考えるようになったほか、仕事に余裕がある他部署に、加工を前もって依頼するなど部署間の調整もできるようになった」

【ポイント/メリハリのある会社に】
 中田社長は「気合と根性で頑張るのは古い時代の発想」と断言する。今後は昔ながらの町工場のやり方では通用しないと判断し、親子参観で新入社員の両親との交流の場の設定、ITによる工場の見える化の推進と、ソフト面の充実を図っている。これらを通じ、中田社長は「仕事を効率的に進め、社員が定時で仕事を終えてスポーツなど各自好きなことをする時間を過ごして、翌朝また会社に出社してくる、メリハリのある会社にしたい」とする。
(聞き手=村上授)
中田寛氏
日刊工業新聞2018年10月18日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
親子の間で交わす話も、職場を知ってもらえることで変わりそうです。

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