ニュースイッチ

カンナを応用したかき氷機、誕生のきっかけは創業者のひと言にあった

就活生も関心を寄せるサカタ製作所の製品開発とは
カンナを応用したかき氷機、誕生のきっかけは創業者のひと言にあった

アイスフレークは出したい食感に合わせて氷の回転速度などを変えられる

 屋根金具など建築金物を製造販売しているサカタ製作所(新潟県長岡市、坂田匠社長、0258・72・0072)が、新市場の開拓に力を入れている。2018年に入り、食品向けの機械や道具を相次いで投入した。これらは創業当初の事業だったカンナの技術の応用や長年培ってきた金属加工技術を生かして生まれた物。多くの注文を集めている上、新卒採用でも効果が出始めている。

大工職人に披露


 9月、サカタ製作所構内で開かれた大工職人によるカンナ削りの練習会でかき氷が振る舞われた。自社開発の黒いかき氷機「アイスフレーク」。社員が機体上部のモニターにタッチすると削られた氷が皿の上に舞い積もっていく。氷の回転数や上から氷を押さえる部分の下降速度などを、出したい食感に応じて変更できる。氷をかく刃の部分は取り外せて洗え、氷を盛る皿を回しやすい設計にした。

 同社はカンナで創業したが、大工道具の衰退から屋根金具に事業転換した経緯がある。小林準一取締役は、カンナに思い入れがある創業者の坂田省司氏が16年に病床で発した「例えば食のような、人を笑顔にできる仕事は最高だな」という言葉が忘れられなかった。ソーラーパネル向け金具を手がけたが、“ソーラーバブル”後に売上高が低迷。新分野の開拓は必須だった。食とカンナ、二つが小林取締役の頭の中で、かき氷機に結びついた。

「削り」試行錯誤


 小林取締役をはじめとする総務担当者らで開発に着手。「『うちは建築金具屋だ。一体何をしているんだ』と初めは冷ややかな目で見られることもあった」(小林取締役)。かき氷店を回っては店主に現在の機械の使い勝手を聞くなど1年以上試行錯誤を繰り返した。

 地場企業と協力してできたかき氷機はレンタルで提供を開始。新潟県内各地のイベントを中心に引き合いが多く、県外からの問い合わせもあるという。年内の発売も目指す。

 もう一つの新分野が金属製のワインクーラーとブラケット。クーラーは真空二重構造で冷やさずとも使え、ブラケットはテーブルの下に取り付ける形で卓上の皿の邪魔をせず、“インスタ映え”で顧客増を狙う都内のレストランに好評だ。

新卒採用に効果


 新製品は顧客の視線だけでなく、就職活動中の学生の関心も集めている。就職説明会に製品を展示したところ、開発秘話に興味を持った就職希望者が殺到したという。「ロマンを持って挑戦した姿勢に共感してもらったのかもしれない」と小林取締役は分析する。社内に活気が生まれ始めたサカタ製作所。今後どんな分野にチャレンジするか注目したい。
(文=新潟・山田諒)
ワインクーラーは都内のイタリアンレストラン1店舗に20台納めるほど人気が高い
日刊工業新聞2018年10月16日

編集部のおすすめ