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町工場の「弓具」、東京五輪を目指す

町工場の「弓具」、東京五輪を目指す

西川精機製作所などが参画する「プロジェクト桜」は18年度中にアーチェリー弓具の初期モデルを発表予定(写真は西川社長)

 東京五輪・パラリンピックの開催まで、あと2年を切った。日を追うごとに盛り上がりを見せる中、中小企業も世界的なスポーツの祭典に熱い視線を注いでいる。自慢の技術で晴れの舞台を目指す取り組みを追った。

初期モデル準備


 東京都江戸川区内の町工場4社などが参画する「プロジェクト桜」は、アーチェリー弓具の開発に取り組んでいる。国産アーチェリー弓具の復活を掲げ、東京五輪での採用、その後の事業化を目指す。プロジェクトリーダーを務める西川精機製作所(東京都江戸川区)の西川喜久社長は「日本人の体に合った、質の高い弓具をつくる」と意気込む。

 2017年に開発した試作機は弓具のハンドル(中央部)とリム(板バネ)を接合する機構を独自開発し、特許を出願した。従来品と比べて投射時の機体のガタつきを抑え、安定性を高める効果がある。現在は参加企業や競技関係者と連携し、細部の改良を進行中。18年度中に初期モデルを発表する予定だ。

部門一体が強み


 採用のカギは製品が選手に受け入れられるかどうか。「なるべく多くの選手に使ってもらい、改善点を探りたい」(西川社長)と競技関係者の声を最終製品に反映する。また、国際大会での使用を見据えて国際基準に沿った製品の仕様書を作成し、協会に提出する予定だ。

 19年度には新たに5軸加工機を導入予定で、製造体制を強化する。西川社長は「設計と製造部門が一体であることは強み。対応力と柔軟性の高さは大企業に負けない」と力を込める。町工場ならではの強みを武器に東京五輪での採用を狙う。

 空気抵抗の低減が勝負を左右する自転車競技。日本風洞製作所(福岡県久留米市)が開発した風洞試験装置は、アスリートの動作確認や製品開発での導入に期待がかかる。

 装置の最大の特徴はトラックで運べるほどのコンパクトさ。建屋の建設や稼働用電源の確保など、設置や利用に多額の費用がかかる風洞試験を身近なものにした。送風機内にある2基のプロペラが最大で秒速15メートルの風を生む。測定台上では姿勢の確認やホイールやフレームなどの性能データの取得ができる。

開発方針を転換


 開発はローン・ジョシュア社長らが学生時代から進めてきた研究成果を応用し、当初はアマチュア競技者向けに進めていた。そして研究開発分野でも身近に使える風洞試験装置の需要があると知り、開発方針を転換。小型化、軽量化、気流制御の3点を軸に改良を重ね、標準仕様で奥行き約1・2メートルまで小型化を実現、製品化に至る。
ローン社長は、学生時代から自転車でスピードを追い求めた経験を製品開発に生かす

 6月にはアスリートを支援するメーカーに納入した。ローン社長は「研究開発用で実績や改良を重ね、アマチュア競技者向けにも広げたい」と、自身も自転車愛好家の立場から期待を寄せている。
日刊工業新聞2018年8月14日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞で今日から4回の連載を行います。ニュースイッチでも掲載予定です。

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