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唾液腺器官を再生、口腔乾燥症の治療に期待かかる

マウスES細胞から成功
 昭和大学の美島健二教授、理化学研究所(理研)の辻孝チームリーダーらは、マウスのES細胞(胚性幹細胞)から唾液分泌能を有する唾液腺器官の再生に成功した。この唾液腺器官をマウスに移植すると生着して唾液を分泌し、さらに成分も生理的唾液の成分と似ていた。唾液分泌の低下で起きる口腔(こうくう)乾燥症の治療などに応用が期待される。成果は11日、米電子科学誌ネイチャー・コミュニケーションズで発表された。

 研究チームが唾液腺の発生初期に働く遺伝子を解析すると「Sox9」と「Foxc1」が同定された。この二つの遺伝子を、ES細胞から作った口腔粘膜の細胞に導入して培養すると、枝分かれした小さな唾液腺器官「唾液腺オルガノイド」が発生した。

 唾液を分泌する器官「耳下腺」を切除したマウスに唾液腺オルガノイドを移植すると、移植場所で成熟し、酸味に反応して唾液分泌が促進されるといった機能を持っていた。また、通常の唾液に含まれるような消化酵素や粘液の成分も分泌されていた。美島教授は「ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から唾液腺オルガノイドを作製できれば、再生医療への活用が期待できる」と話した。
日刊工業新聞2018年10月12日

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