今年のノーベル賞自然科学3賞、改めてまるっと紹介

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ノーベル賞受賞が決まり会見する本庶氏(左)
 2018年ノーベル賞の自然科学3賞が出そろった。京都大学の本庶佑(たすく)特別教授が免疫を利用したがん治療法開発への貢献で生理学医学賞の受賞が決まり、日本中がお祝いムードに包まれた。さらに物理学賞では生体試料の観察や目の手術に応用可能なレーザー物理学、化学賞は生物進化の仕組みを利用したたんぱく質の生産手法の開発など生命科学に関わるテーマが受賞対象となった。異分野融合による新分野の創出が期待される。(大阪・安藤光恵、冨井哲雄、小寺貴之)

生理学医学賞 本庶氏が受賞


 18年のノーベル生理学医学賞は、京大高等研究院の本庶特別教授と米国のジェームズ・アリソン博士に決まった。本庶特別教授は免疫活性化を抑える分子「PD―1」を発見。その働きを阻害し免疫細胞ががんを攻撃できるようにする抗体医薬品「オプジーボ」の開発に結び付いた。アリソン博士も同様の働きの分子「CTLA―4」を発見し、同「ヤーボイ」開発につながった(3面参照)。

 がんを免疫で攻撃する、がん免疫療法の発展に貢献したことが評価された。ただ免疫力を高めてがんを攻撃する方法は望ましい成果がなかなか得られず、実現は難しいとみられていた。本庶特別教授らは免疫のブレーキ解除で免疫の力を引き出し、がんを攻撃する逆転の発想を確立した。

 本庶特別教授は「二つの抗体医薬品を組み合わせ、より強い治療効果が出せる。共同受賞もベストの組み合わせ」と喜んだ。ただ「誰にでも効果があるわけでなく、抗体を組み合わせても良くなるとは限らない」と指摘した。

 がん免疫療法が発展途上にある現状を「感染症で抗生物質『ペニシリン』が発見されたような段階」と例える。今後「治療薬が効かない人がいる理由や、効果を高める方法を突き止めたい」と意欲を燃やす。

物理学賞 “光ピンセット”開発


 レーザー技術は理工学の基礎的な研究にとどまらず、通信やレーザー加工など幅広い分野に応用されている。18年の物理学賞は、レーザー物理学の分野で画期的な発明をした米・フランス・カナダの研究者3氏が受賞する。

 米ベル研究所のアーサー・アシュキン博士は80年代にレーザー光をレンズで集め非常に小さな物体を光の圧力で触れずに操作できる「光ピンセット」を開発。粒子やウイルスなどさまざまな試料を傷付けずに操作できる手法を確立した。生命科学分野での研究の進展に大きく貢献した。

 一方、フランスとカナダの2氏は短い時間間隔で点滅するように発振する「パルスレーザー」の開発の進展に貢献。レーザー光を圧縮して増幅し短い時間で高出力のレーザーを放出できる「チャープパルス増幅法(CPA)」を開発した。従来課題だった増幅器の破壊を起こさずパルスレーザーの高出力化が可能になった。こうしたレーザー技術は材料の正確な切断や視力矯正手術などに応用されている。

 

化学賞 たんぱく質“進化”促進


 化学賞は近年、研究のための研究が評価されている。化学賞は主に生化学と分析化学、有機・材料化学の分野が候補だ。14年の高解像度蛍光顕微鏡や17年のクライオ電子顕微鏡はライフサイエンスのの強力な分析ツールになった。

 18年は生化学分野から選ばれた。生き物の進化のような仕組みをたんぱく質などの製造に取り入れた研究が評価された。一つは「指向性進化」という手法で、酵素の遺伝子にランダムな変異を入れて有用な酵素を選別する。変異導入と生産、選別を繰り返して酵素の性能を高める。

 もう一つが「ファージディスプレー」という手法だ。バクテリオファージというウイルスを介して生産と選別を繰り返し、たんぱく質に“進化”を促す。

 エーザイが販売する関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」の開発にも使われた。生化学はライフサイエンスのためにツールを提供する学問になって久しい。化学賞はこの流れを後押ししている。

抗体医薬品「ヒュミラ」(アッヴィ提供)

日刊工業新聞2018年10月5日

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