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簡単ではない中小企業の「医工連携」、“脱下請け”への処方箋

簡単ではない中小企業の「医工連携」、“脱下請け”への処方箋

近年の医工連携では臨床現場のニーズをつかむべく、臨床ニーズ発表会が行われている

 全国の中小企業で、医工連携の動きが加速している。現在注目されているのは、加工や部品製造などで高い技術を持つモノづくり企業と医療機器メーカー、臨床現場の3者で取り組む医工連携だ。下請け企業を脱すべく、医療分野進出を狙うモノづくり企業も多い。許認可などの各種厳しい規制と戦いながら、新たな医療機器の創出を目指す。

製販許可難しく


 「臨床現場のニーズとモノづくり企業を、医療機器メーカーが橋渡しできるかが成功のカギを握る」。日本医工ものづくりコモンズの柏野聡彦専務理事は近年の医工連携をこのように分析する。

 従来の医工連携は、臨床現場とモノづくり企業を直接マッチングしていた。ただ、医療機器は製造・販売の許可を取得するが難しく、作る技術があっても販売までこぎつけるのは容易でなかった。そこで間に入るようになったのが、既に許可をもつ医療機器メーカーだ。

成功事例


 実際に成功事例も生まれている。耳鼻咽喉科向けの医療機器を製造、販売する第一医科(東京都文京区)は、山形大学や山形のモノづくり企業と連携。内視鏡下耳科手術用器具「スーパーマイクロ鉗子(かんし)山形大式」やLEDライト付きスコープ「LEDステラスコープ」を開発した。第一医科の林正晃社長は「当社はドクターのニーズをとるところから市場投入までできるノウハウを培っている。また多くのモノづくり企業ともつながっている。3者で協力して開発を進める」と連携の仲介を買って出る。

 しかし、“脱・下請け”を掲げて医工連携に挑むモノづくり企業からすると、医療機器メーカーの下請けになっただけという感覚に陥る懸念がある。柏野専務理事はそれでも医工連携に挑んでほしいと鼓舞する。「いきなり医療機器メーカーにはなれない。共同開発の過程で許可の取り方や設計などを学ぶ必要がある。通常の下請けと違い、言われたモノを作るだけではない。脱・下請けの第一歩として考えてほしい」と話す。

アイデア枯渇


 また、近年は医療機器メーカーが開発テーマを見つける場にもなっている。自社だけで製造・販売していると新しいモノを開発するアイデアが枯渇しがちだからだ。

 日本医工研究所(東京都文京区)の寺尾章社長は「臨床ニーズ発表会を開催し、医療機器メーカーに病院の先生と接点をもつ場を提供している。一つでも多くの課題を解決してほしい」と意気込む。
(文=門脇花梨)
日刊工業新聞2018年10月4日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
臨床現場の課題を医療機器メーカーが察知し、モノづくり企業が協力して解決する。医工連携は新たな段階に入ろうとしている。(門脇花梨)

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