自らのお尻で試したイグ・ノーベル賞、「座ったままで大腸検査」の笑いと原点
堀内先生の20年間の研究と、日本が直視すべき地域医療に光をあてる
2018年のイグ・ノーベル賞に昭和伊南総合病院(長野県駒ヶ根市)の堀内朗内科診療部長・消化器病センター長が選ばれた。自身のお尻で座位大腸内視鏡検査法を研究した成果を評価され医学教育賞を受賞した。イグ・ノーベル賞は人を笑わせ、そして考えさせる研究を表彰する。日本人の受賞は12年連続。科学や研究に携わる人の裾野の広さや、発想の豊かさが表れる。
大腸検査は患者の負担軽減と内視鏡操作の確実性などが模索されてきた。座った姿勢での検査はトイレの姿勢に近く、挿入時の抵抗が少ない可能性が期待された。
オリンパス製の直径10・3ミリメートルの結腸観察用の小型内視鏡を使い、自らの身体も利用して患者負荷の少ない検査法を試行錯誤した。堀内消化器病センター長は表彰式で「まず日本の内視鏡検査と内視鏡メーカーの技術がある。自分で座位検査する姿はおかしいかもしれない。だがこの研究でたくさんの教訓が得られた」と紹介した。
最高峰の研究を表彰するノーベル賞に対してイグ・ノーベル賞は人を笑わせ、考えさせる研究に光を当てる。笑いを通して多くの人を振り向かせ、その科学的な奥深さに引き込む。学術界と社会をつなぐ働きがある。
2018年は、平和賞には自動車運転中の搭乗者の叫び声やののしり声を調べて、その動機や頻度を分析したスペインなどの研究、化学賞には人間の唾が汚れを落とす能力を調べたポルトガルの研究、生殖医療賞として男性性器に郵便切手をまいて寝ることで勃起不全を簡易検査する米国などの研究が表彰された。医学賞に選ばれた米国の研究はジェットコースターの急加速度変化を利用して腎臓結石の早期治療を目指した。
イグ・ノーベル賞の日本人受賞は12年連続。過去には携帯型育成ゲーム「たまごっち」や犬語翻訳機「バウリンガル」なども表彰された。大学の研究者に限らず、民間や在野の研究者、技術者が評価されている。より広い意味での科学技術力を表す記録になる。
授賞式直後の堀内朗消化器病センター長とのやりとりは次の通り。
―どうして研究が目にとまったと思うか。
「正直、理由はわからない。ただ、今の病院で働き始めてから20年間ずっと研究にあけくれていたのは確か。研究業績は英語論文100本以上、しっかりとチェックされていたようだ」
―研究の経緯は。
「私の大腸内視鏡研究の原点だったと思う。自分で自分に挿入できれば『大腸内視鏡検査は簡単だ』と人は思ってくれると単純に考えたように思う」
―検査法を発表した時の国内の反響は。妙案と受け止められたのか、面白研究と受け止められたのか。
「お笑いで終わった。すでにいろいろ変な研究をしていたので『またか』という感じだった。この受賞で注目を頂いた。とにかく、大腸がんで死なないために大腸内視鏡検査の普及を望むのみだ。検査法自体は単純ではない。まだ検討の余地がある」
―お医者さんが研究する意義は。
「当院は、現在は先進的研究でようやく生き残っていると地域の方も職員も理解しているように思う。私を知る患者さんは『堀内は病院の医者だけど、いつも研究している』と知ってくれている。特徴がないと公立病院でも存続が厳しい世の中だ。でもこんなに研究している一般病院の医師を私は知らない」
大腸検査は患者の負担軽減と内視鏡操作の確実性などが模索されてきた。座った姿勢での検査はトイレの姿勢に近く、挿入時の抵抗が少ない可能性が期待された。
オリンパス製の直径10・3ミリメートルの結腸観察用の小型内視鏡を使い、自らの身体も利用して患者負荷の少ない検査法を試行錯誤した。堀内消化器病センター長は表彰式で「まず日本の内視鏡検査と内視鏡メーカーの技術がある。自分で座位検査する姿はおかしいかもしれない。だがこの研究でたくさんの教訓が得られた」と紹介した。
最高峰の研究を表彰するノーベル賞に対してイグ・ノーベル賞は人を笑わせ、考えさせる研究に光を当てる。笑いを通して多くの人を振り向かせ、その科学的な奥深さに引き込む。学術界と社会をつなぐ働きがある。
2018年は、平和賞には自動車運転中の搭乗者の叫び声やののしり声を調べて、その動機や頻度を分析したスペインなどの研究、化学賞には人間の唾が汚れを落とす能力を調べたポルトガルの研究、生殖医療賞として男性性器に郵便切手をまいて寝ることで勃起不全を簡易検査する米国などの研究が表彰された。医学賞に選ばれた米国の研究はジェットコースターの急加速度変化を利用して腎臓結石の早期治療を目指した。
イグ・ノーベル賞の日本人受賞は12年連続。過去には携帯型育成ゲーム「たまごっち」や犬語翻訳機「バウリンガル」なども表彰された。大学の研究者に限らず、民間や在野の研究者、技術者が評価されている。より広い意味での科学技術力を表す記録になる。
堀内センター長に聞く
授賞式直後の堀内朗消化器病センター長とのやりとりは次の通り。
―どうして研究が目にとまったと思うか。
「正直、理由はわからない。ただ、今の病院で働き始めてから20年間ずっと研究にあけくれていたのは確か。研究業績は英語論文100本以上、しっかりとチェックされていたようだ」
―研究の経緯は。
「私の大腸内視鏡研究の原点だったと思う。自分で自分に挿入できれば『大腸内視鏡検査は簡単だ』と人は思ってくれると単純に考えたように思う」
―検査法を発表した時の国内の反響は。妙案と受け止められたのか、面白研究と受け止められたのか。
「お笑いで終わった。すでにいろいろ変な研究をしていたので『またか』という感じだった。この受賞で注目を頂いた。とにかく、大腸がんで死なないために大腸内視鏡検査の普及を望むのみだ。検査法自体は単純ではない。まだ検討の余地がある」
―お医者さんが研究する意義は。
「当院は、現在は先進的研究でようやく生き残っていると地域の方も職員も理解しているように思う。私を知る患者さんは『堀内は病院の医者だけど、いつも研究している』と知ってくれている。特徴がないと公立病院でも存続が厳しい世の中だ。でもこんなに研究している一般病院の医師を私は知らない」