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手術ロボット時代、大学病院は医療人をどう育てる?

東京医科大学・鈴木学長に聞く「国際基準に沿った医学教育を」
手術ロボット時代、大学病院は医療人をどう育てる?

写真はイメージ

 東京医科大学は医学部のみを有する単科大学だ。コンパクトな大学組織と対照的に、新宿副都心に位置する付属の大学病院は、多くの患者が利用する中核病院として存在感を示す。“患者とともに歩む医療人を育てる”という使命を掲げ、患者に寄り添う医療の提供を目指す。そうした医療人育成の戦略や、研究について、鈴木衛学長に聞いた。

 ―患者に寄り添う医療とは何でしょうか。
 「わが校では診断や治療時に体への負担が少ない『低侵襲』な手法を研究している。その一つとして医療支援ロボットの『ダヴィンチ』の導入を進めてきた。前立腺がんの症例数は国内トップクラスだ。7月に開設する新病院では、泌尿器科、産婦人科、消化器外科、耳鼻咽喉科で導入する。保険診療外でも、低侵襲な治療法として活用していく」

 ―次世代の医療を支える人材育成戦略は。
 「診断や治療における低侵襲アプローチは世界的にも非常に関心が高く、ニーズも増える。ダヴィンチを使える若い医師の育成が重要だ。『ロボット手術支援センター』にはトレーニング専用のダヴィンチを設置している。ロボット手術を学べることがわが校の魅力となっており、東京医科大病院に入局を希望する若い医師が全国から集まっている」

 ―学生や若手医師への医学教育の質向上にも積極的です。
 「国際基準に沿った医学教育を実施する機関として認定された。こうした動きが韓国や台湾などのアジアの学校に比べ、日本は遅れていた。わが校は16年に認定を受け、卒業した医師がさらに海外で活躍できるようになっている」

「“診断力日本一”をキャッチフレーズにしている。病院内のシミュレーションセンターでは、疾患がプログラムされ病状を再現する人形型医療機器などを活用している。こうした教育により、実践力と診断力向上を目指している」

 ―中長期的な研究や人材育成には財政基盤も重要となります。
 「病院収入が占める割合は大きく、安定した財政基盤として教育や研究を支えている。研究費に外部資金を活用できればより効率的だ。わが校では科学研究費獲得や日本医療研究開発機構(AMED)の委託事業などで外部資金を獲得してきた。2010年頃と比較して、3―4倍ほどに増えている。さらに企業や自治体と連携した研究を増やしたい」
【略歴】
鈴木衛(すずき・まもる)74年(昭49)東京医科大医学部卒業。97年同大耳鼻咽喉科学教室主任教授。02年同大理事。05年同大学病院副院長。08同大副学長、14年学長。愛媛県出身、69歳。
東京医科大学学長・鈴木衛氏
日刊工業新聞2018年6月14日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
手術支援ロボットを用いた手術の保険適応が拡大し、ダヴィンチを扱える人材の需要が今後さらに高まる。そうしたニーズに対応し、若い医師への教育環境が充実していることは東京医科大の大きな魅力だ。医学教育は国家試験への合格が一つの目標だが、先端医療に学生のころから触れ、実践力を強化する教育でその目標を達成していた。 (日刊工業新聞科学技術部・安川結野)

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