三菱電機とソニー、大型映像装置で狙うはスポーツエンタメ市場

「製品単体でいつまでも差別化できるわけではない」

 スポーツイベントのエンターテインメント化が進み、観戦方法も変わりつつある。そこで存在感を放つのが、数十メートル規模の大きさの大型映像装置だ。三菱電機とソニーは、高精細といった映像美だけでなく、音響や映像コンテンツとの連携などソリューション提案をそれぞれ強化している。2020年東京五輪・パラリンピックの開催まで2年を切った。大規模なスポーツイベントを前に、スポーツとエンターテインメントの相乗効果を創出し事業拡大を狙う。

 1980年にカラー大型表示装置を製品化し、大型ビジョンの先駆けとなった三菱電機。生産拠点である長崎製作所(長崎県時津町)の田中光顕所長は「オーロラビジョンやダイヤモンドビジョンという世界初のブランド力は強い」と胸を張る。事業戦略の軸は、製品の売り切りビジネスからの脱却と、エンターテインメント対応強化の二つだ。

 同社の強みは、映像を映し出す発光ダイオード(LED)モジュールから組み立てまで一貫生産している点。そこで経年劣化したLEDモジュールをメンテナンスして再び高精細にするビジネスを展開する。さらにこれまで不得手としていたエンタメ領域を強化。照明・音響機器メーカーや配信技術に強みを持つ企業といった他社との協業も進める方針だ。

 16年にはQVCマリンフィールド(千葉市美浜区、現ZOZOマリンスタジアム)で、複数の大型映像装置や照明などと連動できる大型ビジョンシステムを納入。19年には阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)にも採用される予定だ。田中所長は「LEDから手がける製品技術力とエンタメ性の向上で、わくわく感を醸成し攻めに転じる」と力を込める。

 映画や音楽事業で培ったコンテンツ制作ノウハウ、放送機器事業で使われるデータ伝送技術といったグループ資産を強みに売り込むのは、ソニーだ。これまでは映像美など設備面の強みを打ち出すことが多かった。しかしソニービジネスソリューションバリュー・クリエイション部門の庄野雄紀マーケティングマネジャーは「3年ほど前から、来場客の体験を提案してほしいという技術を活用した演出プロデュースのニーズが高まってきた」と明かす。

 そこでビジネスの軸をモノからコトへ移行。特定の座席に設置したタブレット端末に中継映像のほか、複数の場所に置かれたカメラで撮影したさまざまなアングルの映像やブルペンの様子などを映した特典映像を配信するシステムを15年に横浜DeNAベイスターズに納入した。

 17年には場内の演出だけではなく、ソニーが抱える4カ所のライブハウスへのライブ中継やスマートフォンなどのモバイル端末に映像配信できるシステムを、カシマサッカースタジアム(茨城県鹿嶋市)に提供。ソニービジネスソリューション営業部門の天城秀啓統括課長は「大型映像装置はビジョンを提供するというより、新しい体験のためのツールの一つという位置付けだ」と説明する。

 さらに6月、ソニーのグループ会社を含む横断組織「ロケーションバリュー企画室」を設置した。「コンテンツや映像に強いソニーへの期待は高い」(庄野マーケティングマネジャー)。グループ資産をより活用できる体制を整え、付加価値提案を強化する。コンテンツ提案も含めて顧客のニーズを吸い上げて具現化し、スタジアムだけでなく映画館やショールームなどへの展開も視野に入れる。

 各社がソリューション提案を強化する背景には、価格攻勢をかける中国勢の技術の追い上げもある。これまでは映像の美しさや画面を大型にする技術難易度など製品の性能向上が差別化要素だったが、三菱電機の田中所長は「いずれキャッチアップされる。製品単体でいつまでも差別化できるわけではない」と危機感を示す。

横浜スタジアムが導入したソニーのシステム(ソニー提供)

(文=政年佐貴恵)

日刊工業新聞2018年10月2日

政年 佐貴惠

政年 佐貴惠
10月02日
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競争激化を受けて各社の取り組みが活発になることで、スポーツやイベントの楽しみ方が変わるだけでなく、新たなビジネスが生まれる可能性も広がりそうだ。

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