米国は儲かる市場ではなくなった!日系自動車「量から質」へ転換急ぐ

4年ぶりに1700万台割れへ。膨らむ奨励金のコスト管理重要に

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 米国の自動車市場の成長鈍化が鮮明になってきた。2018年は4年ぶりに年間販売が1700万台を割り込む可能性がある。日系自動車メーカーは市場拡大局面では販売増をテコにして収益拡大を実現してきたが、この方程式が通じなくなる。各社はやみくもに台数を追わず、1台当たりの利益を上げる販売の質の向上を急ぐ。

 「不透明な状況を踏まえ慎重に見通した」―。トヨタ自動車は8月、19年3月期通期の北米の連結販売台数見通しを従来予想比5万台減の275万台に下方修正した。理由を白柳正義専務役員はこう説明した。

 もともと車種の切り替えがあり7月以降は販売がスローダウンする見込みだった。それに加え「足元の販売状況や金利上昇を踏まえた」という。

 米国の自動車市場はリーマン・ショック後の09年に1000万台レベルまで落ち込んだが、その後は急回復。16年は前年の過去最高記録を更新し1755万台まで伸びた。しかし17年は1723万台と減少に転じ、その傾向が続く。

 市場の拡大・縮小を左右する要因の一つが金利だ。米国の消費者は9割がローンやリースで自動車を購入するとされる。リーマン・ショック後の歴史的な低金利は消費者を新車購入へと駆り立てたが、17年頃から金利が上昇しブレーキがかかった。

 また、低金利時代に増えたリース車両が契約満期を迎え、中古車市場にあふれてきた。リースの中古車は使用年数が浅く状態が良いため、新車市場を侵食する存在になる。

 金利上昇に伴い新車の販売減速は今後も続きそうだ。販売台数についてSBI証券は19、20年とも1650万台、ゴールドマン・サックス証券は19年1640万台、20年1550万台と予想する。

 すでに販売台数増をテコにした収益確保が難しい局面といえる。18年4―6月期連結決算はトヨタ、日産自動車、三菱自動車の北米事業の営業損益が悪化した。収益改善には、販売台数重視より「質を高める」(田川丈二日産常務執行役員)取り組みが重要になる。

 質を高める場合、焦点は値引きの原資として販売店に支給する販売奨励金(インセンティブ)の取り扱いだ。「日系メーカー(のインセンティブ額)は比較的自律的」(手塚謙二PwCあらたパートナー)だが、業界平均は上昇傾向にあり、17年には過去最高水準の3500ドル超に達し収益圧迫要因になっている。

 トヨタは18年度も前年度並みのインセンティブを計画するが、月次や3カ月ごとと期間で区切ったり、車種ごとに金額を検討したりするなど「出し方を工夫する」(小林耕士副社長)。

 ただインセンティブの制御は簡単ではない。日産は18年度に入り金額を落としたが、高額なインセンティブに慣れた消費者が離れ4―5月の販売が落ち込み、6月頃からまた増額した。ゴールドマン・サックス証券の湯沢康太マネージング・ディレクターは「インセンティブ抑制にはある程度の時間が必要。腰を据えて取り組むほかない」と指摘する。
             

日刊工業新聞2018年9月27日

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後藤信之
編集局第一産業部
デスク

TAG交渉中は発動しないことで合意し、日本側は一息付いた格好。ただ米国の自動車産業の生産拡大・雇用増はトランプ大統領が狙う大本命。日系自動車メーカーが狙い打ちされるリスクはくすぶり続ける。日本の自動車メーカーにとって米国は最重要市場で、17年は日本から総輸出台数の4割近くを占める約174万台を輸出した。関税引き上げや台数制限を回避できず、米国向け輸出が減れば、部品メーカーも含め国内の自動車産業基盤を維持することは難しくなる。

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インセンティブ

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