IoTで存在感増すか、無線通信規格“ブルートゥース・メッシュ”の正体

ビルや工場など産業分野への展開が期待される

 クラウドやIoT(モノのインターネット)の足回りとなる無線ネットワークの一つとして、近距離無線通信規格「ブルートゥース」の存在感が増しそうだ。ブルートゥースはスマートフォンなどの個人利用が中心だったが、“多対多”のデバイス通信ができる新機能「ブルートゥース・メッシュ」が追加され、ビルや工場などの産業分野への展開が期待される。雲の上の戦いが激化する中、頻発する現場データをクラウドにつなぐ地上戦も熱気を帯びている。

 「ブルートゥースはスマホをはじめ、通信機能を備えた身近なデバイスのほとんどすべてに対応し、どの基本ソフト(OS)でも動き、どこからでも使える」。標準化団体であるブルートゥースSIG(米ワシントン州)のロリー・リー上級マネージャーは利点を強調する。

 多様なデバイスをクラウドやIoTにつなぐ無線ネットワークといえば、携帯電話回線のほか、ブルートゥースと同様の2・4ギガヘルツ帯では「Wi―Fi(ワイファイ)」「ジグビー」などもある。産業IoTでは920メガヘルツ帯の需要も増えており、日本規格の「Wi―SUN(ワイサン)」などに続き、ここにきて省電力広域無線ネットワーク(LPWA)の「シグフォックス」「ローラWAN」が脚光を浴びる。

 ブルートゥースは使い勝手はよいが、通信距離が数メートルから数十メートル程度と短く、圏外に外れるとつながらない。これがボトルネックだったが、メッシュは実質的に距離の壁を越える。カギとなるのはデバイス同士をメッシュ状に相互接続してデータを送る中継機能。これによりブルートゥース内蔵デバイスを数十から数千台つなぐ大規模なセンサーネットワークを構築できる。

 メッシュ機能はジグビーなどでも実現しているが、ブルートゥース・メッシュはネットワークにつながっているデバイス全体にリレー(中継)しながらデータを送る「洪水型」と呼ばれるユニークな方式が特徴。あるデバイスが発信したメッセージを近くのノードが受け取ると「そのノードが再び全体に対してメッセージを送る」(リー上級マネージャー)。一つのルートが落ちても複数のルートが確保され、送ったメッセージは目的地まで安全に到達できる。産業用IoTを想定して「暗号化なども強化し、安全性も担保できるように仕様を策定した」(同)という。

 メッシュ機能は16年に標準化されたブルートゥースの新規格(5・0)をベースに17年に仕様が決まった。メッシュの仕様策定に参加した企業は200社以上。アジア勢では日本のほか、台湾、中国、韓国なども多い。

 仕様策定から1年が過ぎ、開発者向けのツールが多数提供され、照明機器を皮切りにメッシュ対応の製品が続々と登場。メッシュ対応のアプリケーション(応用ソフト)はスマホのサイトで手に入るようになり、いよいよ普及期を迎えている。

 ブルートゥース・メッシュの用途は広い。ビルやオフィス向けでは温度・照度センサーなどで環境をモニタリングし、状況に応じて照明や空調の制御を細かく制御することも可能。スマート工場向けは設備・装置の保守や予兆保全にも役立つ。

 ブルートゥース5・0では街中や店舗などに設置し、情報を常時発信するビーコン対応も強化され、これにメッシュ機能が加わることで、対象者の追跡なども可能となる。

 ブルートゥースへの期待が高まっていくのは間違いない。だが、リー上級マネージャーは「近距離通信は一つの技術が支配的になるものではなく、需要に応じて使い分けられる」と指摘する。例えばLPWAはスマホをサポートしていないが、「ブルートゥース・メッシュを使えばスマホなどからLPWAの設定や保守ができる」。

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
09月12日
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IoTで求められるのは多様な選択肢であり、競合との協調がカギとなる。
(日刊工業新聞社・斉藤実)

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