日本のインフラ輸出“苦戦”、30兆円達成へ迎える正念場

米中貿易摩擦の泥沼化による世界経済の失速など懸念

 日本のインフラ輸出戦略が正念場を迎えている。受注額を2020年に10年比3倍の30兆円にすべく着実に実績を積み上げているが、近年は他国との競争も激しい。中国、韓国、欧州などライバルが低価格を武器に攻勢をかける中、設備の耐久性など高レベルな“日本品質”でどこまで対抗できるかが今後の焦点になる。他方、アジア経済は足元では堅調だが、米中貿易摩擦の泥沼化による世界経済の失速、トルコ通貨安が新興国通貨に波及する可能性など、インフラ輸出をめぐる懸念材料も抱える。

 政府によると16年のインフラ輸出受注額は21兆円。「金額を見れば、それなりに順調」と、ある経済官庁幹部は分析する。だが“それなりに”と注釈が付くのには訳がある。13年に15兆円だった受注額は14年に19兆円に伸びたが、15年は20兆円、16年は21兆円と足踏み感が否めない。

 苦戦の原因が他国の攻勢だ。特に中国、韓国の台頭が著しい。低コストに加え、近年は技術力でも日本などを猛追する。エネルギー、交通関連を中心に新興国などで需要が膨らむ中、インフラ受注をめぐる国際競争はかつてないほど激しい。

 厳しい環境下で日本が採る戦略が、選択と集中の徹底だ。「日本が勝てる領域を明確化し、重点的に攻める」(同じ幹部)という。例えば電力では重点テーマの一つにガス火力発電を掲げる。燃料供給から発電までを手がける「ガス・ツー・パワー」のプロジェクトでは、日本のエネルギー事業者のノウハウが生きる。このため商社とエネルギー事業者などの連携を促すことで高水準な一貫型サービスを確立し、受注増につなげる構えだ。

 分野横断的な支援も強化する。6月に改訂した政府の「インフラシステム輸出戦略」には、開発資金を低利融資する円借款制度「STEP」の使い勝手の改善などを盛り込んだ。従来は制約が多く利用しにくいのが難点。例えば、インフラで使う資機材の3割以上を日系企業製にする「原産地ルール」が存在するが、今後は海外メーカーの資機材でも日系企業の部品を一定程度組み込んでいれば、3割にカウントできるよう基準を見直す。

 日本のインフラの品質は各国から高い評価を受ける。他国のコスト競争力に押され気味だが、一貫型サービスやSTEPなど需要国の負担軽減につながる取り組みが浸透すれば、大きな強みになる。

 ただ世界経済の先行きは不透明。中国は対米貿易摩擦と過剰債務問題を抱え、経済堅調な新興国も通貨安懸念がつきまとう。マレーシアは債務返済を優先し、東海岸鉄道の建設中止を表明した。
(文=藤崎竜介)

日刊工業新聞2018年9月5日

日刊工業新聞 記者

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09月09日
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 日本政府は「質の高いインフラ投資」で差別化を図り、成長するアジアの需要を取り込みたい意向。だが、そのアジア経済の先行き次第では、インフラ投資30兆円達成のハードルは一層、高くなる。
(日刊工業新聞社・藤崎竜介)

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