「GAFAのビジネスモデルは一夜にして崩壊するかもしれない」

米グーグルなど巨大プラットフォーマーに市場の逆風

 米グーグルなどGAFA(ガッファ)と呼ばれる巨大プラットフォーマーに対する市場の風当たりが厳しくなっている。欧州連合(EU)による個人情報保護規制の強化や独禁法違反でやり玉に挙がるなど、風雲急を告げている。米フェイスブックに至っては7月に株価が急落し、時価総額がわずか1日で約1190億ドル(約13兆円)減少し、つるべ落としのような状況に直面した。世界を席巻する巨大プラットフォーマーとて、この先が安泰というわけではない。

 総務省の情報通信白書によると、デジタルデータの使用量は2020年に全世界で44ゼタバイト(ゼタは10の21乗)に達する。成長著しいソーシャルデータの量は、00年の1年分が現在の1日分に相当し、さらに20年には1時間分といったスピードで増え続ける。

 GAFAを代表とする巨大プラットフォーマーはこうした“データ爆発”をエネルギー源として、顧客が増えれば増えるほどインフラとしての価値が高まる「ネットワーク効果」によって成長を遂げてきた。

 だが、フェイスブックの一件からも分かるように、ネットワーク効果は逆流することもあり得る。野村総合研究所(NRI)の此本臣吾社長は「生活者は移り気であり疑念や嫌悪感が出てくれば、ある日突然に離脱し、彼ら(GAFA)のビジネスモデルは一夜にして崩壊するかもしれない。プラットフォーマーは厳しい競争にさらされている。いまの姿が5年、10年と続くとは限らない」と指摘する。

 未来予測で問われるのは、デジタル変革をもたらす変化を読み解く視点とシナリオ。NRIは産業資本主義の常識を覆す「デジタル資本主義」の台頭を唱える。カギとなるのは労働生産性から知的生産性へのシフトだ。人間やモノから生み出される“活動情報”が新たな価値を生み出す世界を見据える。

 そこに向かうシナリオは一つではなく、「国・地域や文化によっても異なる」(此本社長)という。NRIが提唱するデジタル資本主義では大きく三つのシナリオを描く。その一つはシェアリングエコノミー論で有名なジェレミー・リフキン氏が提唱する「限界費用ゼロ社会」。すべてが公共財で限界費用が全部ゼロになる世界だ。シェアリングエコノミーの行き着く先の理想社会ともいえるが、ゴールとしての実現性は定かではない。デジタル資本主義では「ポスト資本主義」と呼び、最左翼のシナリオ3と位置づけている。

 此本社長は「現実的な答えはその前段階にあるが、一歩間違えると、SF映画『マイノリティ・リポート』のように、巨大なプラットフォーマーが牛耳る世界となる」と警鐘を鳴らす。マイノリティ・リポートでは、巨大プラットフォーマーが国と結託して、市民をマインドコントロールする。ごく一部の人がそこから上がってくる利益を独り占めする究極の格差社会だ。NRIはこれを「純粋デジタル資本主義」と呼ぶが、現状はそうした世界が現実味を帯びてきたことを予感させる。

 EUによる一般データ保護規則(GDPR)など、個人情報の取り扱いを巡る規制の強化が世界的な潮流となっている背景には、こうした危機感が見え隠れする。わが国でも、次の個人情報保護法の改定では「ウェブ閲覧履歴などを分析し、性別や年代を推測するプロファイリングのあり方などが俎上(そじょう)に載りそうだ」(業界関係者)との声も聞かれる。

 プラットフォーマーは強者ゆえに今後も風当たりは強まりそうだが、此本社長は「プラットフォーマーが提供するサービスから得ているベネフィットにも注目すべきであり、いまはバランスを模索しているところだ。ここをうまく乗り越えることで、次の社会が見えてくる。まだとば口に過ぎない」と展望する。

 

日刊工業新聞2018年8月7日

日刊工業新聞 記者

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08月11日
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日本ならではの強みを持つプラットフォーマーの登場が待たれる。
(日刊工業新聞社・斉藤実)

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