ドバイの中古車、人気「レクサス」を追うクルマとは?

日本車の独走に迫る中国・韓国

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ドバイ郊外の中古車特区「Dubai Auto Zone(DAZ)」で販売される日本車。レクサスも並んでいる(8月筆者撮影)
 アラブ首長国連邦(UAE)の交通インフラの充実に驚く人は多いことだろう。灼熱(しゃくねつ)の砂漠地帯にもかかわらず、センサー反応式有料道路、海底トンネル、地下鉄駅駐車場、そして片道4車線の高速道路だ。それに共通するものは車社会。夕方から深夜までにぎわうのが自動車販売店や用品店。中東の人たちと話すと3分に1回はサッカーか車の話題になる。それくらい車に関心を持つ。

 ドバイ市内から車で30分。砂漠地帯に「Dubai Auto Zone(DAZ)」がある。1990年代、国を挙げて取り組んだ脱石油政策の一環として40近く設けられたフリーゾーンの一つの中古車特区だ。外国資本100%で会社が設立でき、利益全額を本国へ送金可能。しかも関税や法人税が50年間免除される。ただ、UAE以外への再輸出が条件で、中東、中央アジア、アフリカ大陸への拠点ビジネスを各社が展開する。

 中古車特区は00年の開設。7万4000平方メートルの敷地に1万台以上の中古車が展示され、中東最大級。大半のディーラーは80年代に日本に留学や研修で滞在していたパキスタン人が経営する。流ちょうな日本語で今の市場を語ってくれた。「新興国の経済成長でミニバンやトラックなど公共車両の需要よりも個人所有の4輪駆動車(WD)車、スポーツ多目的車(SUV)、2000CCクラスのセダンの需要が伸びている」とパキスタン商人のモハメッド・イクバルさん(48)は説明する。10年前はトヨタハイエース、三菱デリカ、ふそうトラックが人気だったが、今は、レクサスLX、トヨタランドクルーザー、ホンダCRVに移り始めている。

 「千葉、神奈川、愛知などのオークション会場で購入し年間最低400台前後を輸入している。日本で走っていたことが高く売れる理由で、中東やアフリカへ再輸出されている」とイクバルさんは続ける。気温50度Cまで上がる炎天下に並べられている日本の中古車。それをシリアとガーナの商人が物色する姿。

 「私の国は内戦中で道路状況や治安情勢が悪いが、日本車は人気が高い。頑丈で馬力ある車を欲しがる人は多い」とシリア商人のアーメッド・アミーダさん(53)は言った。「経済的にも成長が著しく最近は中間所得層の車所有も増えた。未舗装道路が多いため4WD車を欲しがる人が多く、トヨタや日産の車は昔も今もトップブランド」とガーナ商人のサミュエル・アドさん(34)は日本車人気を表現する。

「伝説」にもターニングポイント


 日本の中古車に目を向ける中東・アフリカの商人は確かに多い。しかし4WD車や2000CCクラスのセダンは日本車を選んでも、大型バスやトラックはインドや中国製を求める向きもあるとイクバルさんは言う。そして「最近は救急車の需要も増えている」。内戦が続くイエメンやシリアから日本の中古救急車に関しての問い合わせが増えている。「現地では軍だけでなく反体制勢力や軍閥組織による民兵の検問所をすり抜けるため、要人が救急車を利用してカムフラージュするために必要だから、とバイヤーから聞いた」と彼は言った。

 流動する中東情勢や新興国の経済成長によって販売する車種や傾向も影響するが、円高が続く日本からの車両を安定して輸入できるのか。「一番、商売に影響及ぼしたのは東日本大震災直後。津波で潮水をかぶった車両が紛れてきた。車体内部は目に見えないので、業者もバイヤーもやむなく韓国車や中国車へ目を向けた時があった」と彼は言った。

 また今後の中古ビジネスにも新たな時代が来るという声もある。「バグダッドでは中古の日本車か新車の中国車か品定めするイラク人が増えている。日本の中古車が独走し続けるとは思わない」とイラク商人のアブ・バンダールさん(32)は言った。

 メード・イン・ジャパン伝説にもターニングポイントが訪れ始めてきているのかもしれない。
DAZでは日本の救急車も売られている。塗装は以前のまま(8月筆者撮影)

(文=トニー高橋〈中東・イスラム圏で活動するコーディネーター〉)

日刊工業新聞2018年8月23日

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明豊
デジタルメディア局
局長

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