電機7社、15年度の営業利益合計はリーマン前水準に回復。成長分野に投資へ
日立は中計で目標に掲げた利益率7%に届かず。「IoTなど成長分野へのシフトが遅れていた」(東原社長)
東芝を除く電機7社の2016年3月期連結決算の業績予想が14日までに出そろい、7社合計の営業利益は2兆1150億円になる見通しだ。BツーB(企業間)市場を中心に攻略し、稼ぐ力はリーマン・ショック前の08年3月期と同水準まで回復する。今後、各社は稼いだキャッシュを成長投資に回し、一段と競争力を高める“好循環”の実現に着手する。
16年3月期は引き続きBツーB事業が利益を創出する。日立製作所は昇降機や鉄道車両など主力の社会インフラ関連事業で稼ぎ出す。三菱電機は中国向け生産設備など、高収益のFA事業が伸長する。パナソニックは車載向け二次電池や住宅用太陽電池、車載事業が堅調。ソニーは利幅の大きい画像センサー事業に力を注ぎ、中国のスマートフォンメーカーや自動車分野を深耕する。
これらの事業で稼いだ資金を用いて、各社は16年3月期から成長投資に踏み切る。パナソニックはM&A(合併・買収)などに対して2000億円の戦略投資を実施。津賀一宏社長は「新規投資(の場所)は、まず日本で考える」と国内市場を成長エンジンに位置付ける。
コンシューマー(消費者向け)製品で苦戦するソニーは稼ぎ頭の画像センサーに命運をかけ、大規模な設備投資に着手。投資額は前期比2・1倍の5010億円を予定し、このうち画像センサーに2100億円を投じる。
三菱電機はパワー半導体や家庭電器などの研究を重視し、14年ぶりに研究開発費を2000億円台に乗せた。設備投資も直近約20年で2番目の水準になる。
一方、日立は成長投資を続けるものの「M&Aの金額が大きくなり、どう使うかというより不足感の方が強い」(中西宏明会長)という。そこで成長局面の中でも構造改革に踏み込み、収益体質を強化する。ビッグデータ(大量データ)分析などIT分野での買収を模索する。
日立、今期は営業利益率7%に届かない見通し
日立製作所が高度成長に向けてアクセルを踏み込む。14日に発表した2015年3月期連結決算(米国会計基準)の営業利益率は主力の社会インフラ事業がけん引し、前期比0・6ポイント増の6・2%に拡大した。一方で16年3月期の営業利益率目標を7%超から6・8%に修正。グローバル企業への転身の難しさも認識し、収益力の強化に向けて構造改革に着手する。2ケタの利益率を誇っている海外勢に追いつくには何が必要なのか。
「利益を上積みし当初の目標に近づけるが、7%よりも右肩上がりの成長が重要だ」。東原敏昭社長兼最高執行責任者(COO)は最終ターゲットの利益率10%を睨み、16年3月期は一里塚であることを強調した。
この5年で日立の収益構造は大きく変わった。単品売りから脱却し、保守サービスで安定的に稼ぐ事業を作り出した。主力のインフラ事業では都市開発など社会課題に商機を見いだし、産業・インフラ設備の販売に利幅の大きいITサービスを絡めて利益の増大に努めた。情報通信事業もソリューションビジネスに転じ稼ぐ力を養った。
主要7事業のうち国内事業が停滞する電力システムと海外で苦戦する建設機械の2事業を除くと、15年3月期は計画通りに成長。2期連続の営業最高益を達成した。しかし海外勢の収益力と比べると物足りない。米GEや独シーメンスが10%程度の営業利益率を保つ一方、日立は6%まで改善したばかりだ。
またM&A(合併・買収)など成長投資に使うフリー・キャッシュ・フロー(FCF)も見劣りする。GEは産業部門のFCFに相当する項目で、14年12月期に121億ドル(約1兆4000億円)を創出。日立の約10倍のFCFを稼ぎ出し、次の買収に備える。
重電の巨人に日立はどう立ち向かうのか。その施策として16年3月期に500億円規模の構造改革を行う。「モノのインターネット(IoT)など成長分野へのシフトが遅れていた」(東原社長)としてIT系人材を移管。下期に成果を刈り取る意向だ。成長局面の中で大きな改革を行うのは異例だ。経営陣の成長意識の高さを伺わせる。
IoT技術やビッグデータ(大量データ)分析は、社会課題の解決策を提案する「社会イノベーション事業」には不可欠な技術。継続的に稼ぐ収益モデルを拡大するには、これら先端技術を早期に取り込み、昇降機や鉄道車両など注力分野で磨きをかけるべきだ。
「この2―3年は手探りだったが、手応えも強かった」。中西宏明会長兼最高経営責任者(CEO)は会見でこう振り返った。今後も挑戦が続くが、時間的余裕は多くない。国際競争で戦い抜く意識を共有し、成長の歩みを速めるしかない。
16年3月期は引き続きBツーB事業が利益を創出する。日立製作所は昇降機や鉄道車両など主力の社会インフラ関連事業で稼ぎ出す。三菱電機は中国向け生産設備など、高収益のFA事業が伸長する。パナソニックは車載向け二次電池や住宅用太陽電池、車載事業が堅調。ソニーは利幅の大きい画像センサー事業に力を注ぎ、中国のスマートフォンメーカーや自動車分野を深耕する。
これらの事業で稼いだ資金を用いて、各社は16年3月期から成長投資に踏み切る。パナソニックはM&A(合併・買収)などに対して2000億円の戦略投資を実施。津賀一宏社長は「新規投資(の場所)は、まず日本で考える」と国内市場を成長エンジンに位置付ける。
コンシューマー(消費者向け)製品で苦戦するソニーは稼ぎ頭の画像センサーに命運をかけ、大規模な設備投資に着手。投資額は前期比2・1倍の5010億円を予定し、このうち画像センサーに2100億円を投じる。
三菱電機はパワー半導体や家庭電器などの研究を重視し、14年ぶりに研究開発費を2000億円台に乗せた。設備投資も直近約20年で2番目の水準になる。
一方、日立は成長投資を続けるものの「M&Aの金額が大きくなり、どう使うかというより不足感の方が強い」(中西宏明会長)という。そこで成長局面の中でも構造改革に踏み込み、収益体質を強化する。ビッグデータ(大量データ)分析などIT分野での買収を模索する。
日立、今期は営業利益率7%に届かない見通し
日立製作所が高度成長に向けてアクセルを踏み込む。14日に発表した2015年3月期連結決算(米国会計基準)の営業利益率は主力の社会インフラ事業がけん引し、前期比0・6ポイント増の6・2%に拡大した。一方で16年3月期の営業利益率目標を7%超から6・8%に修正。グローバル企業への転身の難しさも認識し、収益力の強化に向けて構造改革に着手する。2ケタの利益率を誇っている海外勢に追いつくには何が必要なのか。
「利益を上積みし当初の目標に近づけるが、7%よりも右肩上がりの成長が重要だ」。東原敏昭社長兼最高執行責任者(COO)は最終ターゲットの利益率10%を睨み、16年3月期は一里塚であることを強調した。
この5年で日立の収益構造は大きく変わった。単品売りから脱却し、保守サービスで安定的に稼ぐ事業を作り出した。主力のインフラ事業では都市開発など社会課題に商機を見いだし、産業・インフラ設備の販売に利幅の大きいITサービスを絡めて利益の増大に努めた。情報通信事業もソリューションビジネスに転じ稼ぐ力を養った。
主要7事業のうち国内事業が停滞する電力システムと海外で苦戦する建設機械の2事業を除くと、15年3月期は計画通りに成長。2期連続の営業最高益を達成した。しかし海外勢の収益力と比べると物足りない。米GEや独シーメンスが10%程度の営業利益率を保つ一方、日立は6%まで改善したばかりだ。
またM&A(合併・買収)など成長投資に使うフリー・キャッシュ・フロー(FCF)も見劣りする。GEは産業部門のFCFに相当する項目で、14年12月期に121億ドル(約1兆4000億円)を創出。日立の約10倍のFCFを稼ぎ出し、次の買収に備える。
重電の巨人に日立はどう立ち向かうのか。その施策として16年3月期に500億円規模の構造改革を行う。「モノのインターネット(IoT)など成長分野へのシフトが遅れていた」(東原社長)としてIT系人材を移管。下期に成果を刈り取る意向だ。成長局面の中で大きな改革を行うのは異例だ。経営陣の成長意識の高さを伺わせる。
IoT技術やビッグデータ(大量データ)分析は、社会課題の解決策を提案する「社会イノベーション事業」には不可欠な技術。継続的に稼ぐ収益モデルを拡大するには、これら先端技術を早期に取り込み、昇降機や鉄道車両など注力分野で磨きをかけるべきだ。
「この2―3年は手探りだったが、手応えも強かった」。中西宏明会長兼最高経営責任者(CEO)は会見でこう振り返った。今後も挑戦が続くが、時間的余裕は多くない。国際競争で戦い抜く意識を共有し、成長の歩みを速めるしかない。
日刊工業新聞2015年05月15日 電機・電子部品・情報・通信面