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身近に潜む皮膚炎のリスク。缶コーヒー1日4本以上が・・

「医師の能力が治療効果に顕著に反映される」(松永藤田保健衛生大教授)
身近に潜む皮膚炎のリスク。缶コーヒー1日4本以上が・・

検査の簡便化が期待されている(佐藤製薬の「パッチテストパネル(S)」)

 俗に「かぶれ」と呼ばれる接触皮膚炎。化粧品やゴム製品、アクセサリーなどの利用をきっかけに発症する例があり、身近な疾患と言える。だが生活者がかゆみや炎症の原因を突き止めるのは容易ではない。アレルゲンとの接触を断てば根治が期待できるため、医師による確実な診断が望まれる。

 【化学物質が影響】
 接触皮膚炎とは、主に化学物質が皮膚に接触して生じる炎症のことを指す。工業製品に多く触れる生活をしていると発症のリスクは大きい。例えば美容師はゴム手袋の製造工程で使われるチウラム、はさみに含まれるニッケル、染毛剤の成分であるパラフェニレンジアミンなどで手指の湿疹が起こりうる。

 接触以外に、飲食が皮膚炎を引き起こす事例もある。藤田保健衛生大学医学部皮膚科学講座の松永佳世子教授は、受け持つ患者にクロムへのアレルギー反応を示す人がいた。この患者は缶コーヒーを1日に4本以上飲んでおり、缶に含まれるクロムが原因と考えられたという。飲用停止を指示し、「やめてから3カ月でかなり良くなった」(藤田教授)。

 【テストを簡便化】
 皮膚炎の原因解明にはパッチテストが有効と考えられている。日本では従来、アルミ製の受け皿に適量の試料を入れて貼るフィンチャンバー法が主流で「手間がかかっていた」(同)。だが佐藤製薬(東京都港区)が5月に発売した検査薬「パッチテストパネル(S)」は22種類のアレルゲンが2枚のパネルにあらかじめ配置されており、検査の簡便化につながりそうだ。

 ただ缶コーヒーの例のように、治療では問診もきちんと行う必要がある。医師の意識や能力の向上も期待される。
 

専門医は語る/藤田保健衛生大学医学部皮膚科学講座教授・松永佳世子氏「異常あれば使用中止を」


 接触皮膚炎は原因を確定し除去できれば完治が期待できるため、医師の能力が治療効果に顕著に反映される。原因確定には試薬が必要だが、日本では良いものがなかった。今年、「パッチテストパネル(S)」が保険収載されたことは大きい。(原因の確定後は)患者さんが利用できる安全性が高い代替品を提案し、生活の質の向上につなげたい。

 人間が何かに感作されて臨床症状が現れるには、ある程度の繰り返しが必要。化粧品や医薬部外品を繰り返し使っているうちにかゆみなどが出た場合、箱に「異常があれば(使用を)やめて下さい」と書いてあるのに、やめない人がいる。企業としては、かぶれをゼロにしろと言われると何もつくれなくなる。重篤化を最小にするための努力を皆でしていくべきだろう。
日刊工業新聞2015年10月01日 ヘルスケア面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
最近、自分もかゆみが当然ある。コーヒーはそんなに飲んでないが。

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