中小企業や食品工場で引き合いは高まった!産業用ロボ普及へ詰めの一手は?

ショールーム・研修施設など導入支援が拡大

 日本で産業用ロボットの導入を支援する動きが拡大している。実機を用いたショールームや研修施設の開設が相次ぎ、ロボットシステムインテグレーター(SI)の業界団体も発足した。人手不足を背景にあらゆる業界で自動化需要が増す。ロボットを使ってこなかった中小企業や食品工場などで引き合いが高まり、丁寧なサポートが求められている。人工知能(AI)の活用などでロボットの利用範囲も広がり、既存のユーザーの関心も集めている。

 「先進のモノづくりを見て、実現したい手法を試す場になれば良い」。三菱電機FAシステム事業本部の三条寛和機器事業部長は、7月に東京・秋葉原で開設した工場自動化(FA)機器のショールーム「東日本FAソリューションセンター」の狙いをこう述べた。

 同施設は弁当の盛り付けなどロボットを活用したデモンストレーション展示、試験、研修スペースで構成。AIを活用し、箱にバラ積みされた部品をロボットが自動で取り出す技術なども実演する。

 スイスのABBは6月に愛知県豊田市でショールーム「ABBロボティクス アプリケーション・センター中日本」を開設。自動車産業や金属加工業などを対象に、導入時の生産停止時間を最小化するなど、ユーザーの使いやすさを追求したロボットシステムを提案する。

 ファナックは3月に山梨県忍野村の研修施設「ファナックアカデミ」を36年ぶりに刷新した。以前より延べ床面積を2倍以上に広げ、宿泊施設もリニューアルした。ロボット約50台、コンピューター数値制御(CNC)装置約45台、小型切削加工機12台などと研修設備も充実し、受講者1人が機械1台を自由に利用できる環境を整備した。同社執行役員の平尊之ファナックアカデミ校長は「機械が身近にあり、講義を理解したらすぐに触れることがポイント」と指摘する。

 ロボットへの関心も高まっている。川崎重工業が東京・台場で運営する体験型のショールーム「カワサキ・ロボステージ」の来場者が5月までに5万人に達した。同施設は誰もが気軽にロボットを体験できるのが特徴。学生など一般向けにも開放し、2016年8月の開設から2年弱で大台を突破した。双腕型の協働ロボット「デュアロ」で来場者の似顔絵を色紙に描くデモなどを実演しており、来場者を楽しませながら、ロボットの魅力や技術力をアピールする。

 安川電機が福岡など3県、不二越が富山県で運営する既存のショールームにも、全国から多くの企業関係者らがつめかける。

SI業界団体、7月始動


 産業用ロボットは、現場の状況に応じて周辺機器を組み合わせてシステムを構築して納入する。SIはそのシステム化の役割を担い、特にロボットの導入経験がない現場では、自動化に欠かせない存在として期待を集める。

 そのSI企業など144社は7月、業界団体「FA・ロボットシステムインテグレータ協会」を立ち上げた。初代会長に就任した久保田和雄三明機工(清水市清水区)社長は、「中小のものづくり企業、食品やサービス業で自動化が求められている」とし、これまでロボットを使用してこなかった分野への支援が不可欠との認識を示している。

 ロボットはこれまで自動車や電機など、専門の技術者を抱える大企業を中心に使われてきた。だが近年、人手不足を背景に中小企業や食品工場などでも省人化の需要が高まり、専門の技術者の不足がロボットの普及を妨げる一因となっている。日本ロボット工業会の橋本康彦会長(川崎重工業取締役常務執行役員)は「ロボットメーカーとシステムインテグレーターはロボット産業の発展にとって車の両輪にあたる存在」とし、SI企業の事業基盤強化に期待を寄せる。

 SI各社も導入支援の施設の立ち上げを積極化する。芳賀電機(大阪府吹田市)は7月に本社隣接地で試験利用などが可能なショールームを開設した。ダイドー(名古屋市中村区)は6月に東京都江戸川区で「ダイドー東京ロボット館」を稼働。複数メーカーのロボットを計40台設置し、研修を含めてロボットの導入を支援する。バイナス(愛知県稲沢市)は4月に本社でSIなどを対象とした研修施設「BYNAS教育センター」を開いた。

 

日刊工業新聞2018年8月17日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
08月19日
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自治体でも山形県が7月に山形市でSIを育成するための研修を実施。茨城県は4月に茨城町でロボットの導入検証などが可能な施設「模擬スマート工場」を刷新するなど、官民の垣根を越えてロボットの普及を後押しする動きが広がる。
(日刊工業新聞社・西沢亮)

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