ファナック、170億円投じ射出成形機で“第2の創業” 

3工場を新増設、自動車向け開拓加速

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新設する機械加工工場(イメージ)
 ファナックは射出成形機や放電加工機の工場を増築し、中国を中心に急増する需要に対応する。コンピューター数値制御(CNC)装置などの工場自動化(FA)機器や産業用ロボットでも生産能力を増強。これで射出成形機などを含め、計画する工場の新増設で当面の需要に対応できる見込みだ。主要3事業で積極化してきた設備投資は2018年度を境に一服しそうだ。今後は拡張した工場の効率化へと軸足を移す。

 ファナックによる射出成形機の生産体制拡大は、新しい事業分野に打って出る象徴的な戦略だ。小さい寸法の樹脂製品を作る機種と、それより大きい製品を作る機種の供給基盤が整う。これら両輪で成長軌道を描く。

 同事業の主力生産品は、スマートフォン(スマホ)のカメラレンズといったIT・電機向けの精密な部品。射出成形機は樹脂製品を作る機械。能力は、型を閉じる力である「型締め力」で表す。これが大きいほど、より大きな樹脂製品を作ることができる。

 1984年の市場参入から同社がこだわってきたのは、この型締め力が300トン以下の、比較的小さいな種類の射出成形機だ。スマホのカメラレンズは1台に搭載する枚数が増加傾向にある上、カメラの高性能・高精細化が進んでいることから、高品質のレンズを作る射出成形機の需要が急増している。

 工場では、月産能力を350台から400台に引き上げて対応してきたが、それでもまだフル稼働が続く。納期は、理想とする2カ月を超えた。今回の設備計画の第一義が、こうした足元の需要対応とみられる。

 一方、同社は17年に同450トン機を市場投入し、同300トン以下を拡充する30年来の製品戦略を改めた。これで従来より大きな樹脂製品へのアクセスが可能になった。その代表格が自動車部品だ。自動車部品は「大きなマーケットだが、手が回っていなかった」(稲葉善治会長)ものの、早くも開拓が進んでいるようだ。

 IT・電機から自動車に事業領域を拡大するためにも、より大きな生産スペースが必要だ。生産能力の増強から、自動車などIT以外も重点化しようとする戦略がみえてくる。

 事業領域の拡大では、中国でIT以外の消費者向け製品が進む一方、欧州市場の開拓も順調だ。欧州は伝統的な油圧式の射出成形機の市場だが、ファナックは17年に全電動式の販売を本格化し、風穴を開けた。

 射出成形機事業の大がかりな設備投資は、01年以来の17年ぶりのことだ。今回の施策で整う生産体制や製品構成を後に振り返れば、これが同事業の第2の創業だったと言える転機になるだろう。

世界で市場拡大、昨年22%増


 射出成形機市場は拡大が続いている。経済産業省がまとめた17年の生産台数は前年比22・7%増、生産高は14・5%増だった。けん引役はスマホを中心とするIT製品向けと、世界的に生産が好調な自動車向けだ。

 日本産業機械工業会と日本プラスチック機械工業会がまとめた3月の射出成形機受注台数は、前年同月比21・4%増の1591台だった。前年実績を上回るのは16カ月連続と長期成長にある。1000台のラインが健全水準を示すとされる中、これを17カ月連続で上回った。

 うち輸出が同20・4%増の1162台、内需が同24・0%増の429台と、いずれも20%強の伸びだ。中国のIT、国内外の自動車のボリュームが多くあったとみられる。
                 

(文=六笠友和)

日刊工業新聞2018年5月8日

COMMENT

六笠友和
編集局経済部
編集委員

足元と中長期の市場拡大を織り込み、射出成形機各社は国内外で生産能力の拡大に動いている。

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