国内大手頼りでは先がない…中小製造業が航空宇宙の海外販路を自ら売り込み

 全国各地の中小製造業が、海外の航空宇宙産業との取引実現に向けて動いている。7月に英国で開かれた航空宇宙産業展「ファンボロー国際航空ショー」でも、出展した中小各社がアピールに努めた。ただ、一度の出展で取引が決まるほど、簡単な世界ではない。各社もそれを承知で、長期的な視野で取り組もうとしている。

 「いつまでも国内の重工業大手頼りでは、先がない。海外のウエートを高めなければいけない」―。旭金属工業(京都市上京区)の中村止専務はそう危機感を抱く。

 ピーニングなどの表面処理が得意で、特殊工程管理の国際認証「Nadcap(ナドキャップ)」の非破壊検査認証を2004年に日本で初めて取得した。

 世界2大航空ショーと呼ばれ、隔年開催のパリ、ファンボローの両国際航空ショーには十数年前から出展して売り込んでおり、今回も出展した。中村専務は「毎回来ていると認知してもらうことが大事。1―2年だけでは効果がない」と説く。

 国内の航空機産業は米ボーイングの機体製造を担う重工大手が中小サプライヤーに部品加工や組み立てを発注する構図だ。ボーイングは次期大型機「777X」への移行を控え、大型機「777」を減産しており、中小も影響を受けている。

 新興国の旅客者数増で長期的な成長が見込まれる航空機産業だが、中小の仕事量は重工大手からの受注次第だ。旭金属工業は16年にマレーシア工場を稼働させるなど、重工大手を介さない海外取引拡大を図ってきたが、売上高の海外比率はまだ数%。将来は2割ほどに高めたいという。

 エステック(静岡県清水町)も今回で8年目と、長期視点で出展を続けている。同社は航空機向けが売上高の7割を占め、部品加工が得意だ。国内の仕事は豊富にあり、新工場も間もなく稼働する。好調な状況でも、海外への種まきを怠らない。

 これまで航空ショーで切削加工技術を訴えてきたが、「どこの会社でもできる」と言われることもあった。鈴木誠一社長は部品加工では海外勢とのコスト勝負になると考え、「自社製品を持たなければならない」との思いを強めた。2年前に回転式継ぎ手「スイベルジョイント」を開発した。

 建設機械向けの自社製品を応用し、重工大手のヘリコプターに採用されるなど、国内で実績が出始めている。英語が堪能な社員を採用し、17年から航空ショーでの売り込みを本格化。海外のヘリ大手から見積もり依頼が届くなど、海外での足がかりを得つつある。

新規参入組、技術提案手応え


 航空宇宙産業への新規参入組も海外を目指す。ひびき精機(山口県下関市)は半導体製造装置の部品加工を手がけるが、第2の柱に位置付ける航空宇宙分野を開拓しようとファンボロー国際航空ショーに初出展。難燃性マグネシウムの切削加工技術を訴えた。

 発火温度が900度Cと通常のマグネシウムより200度―300度C高く、燃えやすい欠点を克服した素材で、人工衛星に適用できると提案した。

 人工衛星の構造体で一般的なアルミニウムに比べ、重さが3分の2と軽量化できる。出展ブースに両素材の加工サンプルを並べて重量差をアピールした。松山功取締役は「マグネシウムの加工の難しさを知る人からは良い反応を得られた」と手応えを見せる。

 人工衛星向けに提案したのは、航空機部品では素材変更のハードルが高いと考えたためだ。航空宇宙産業は参入障壁が高いからこそ、より高い可能性を探って動く。

 谷田合金(金沢市)も9年前から航空宇宙産業参入を目指して動き始め、今回初出展した。自動車や半導体製造装置向けの砂型鋳造を手がけ、鋳造品の切削加工まで一貫してできることが強みだ。

 参入のため、特殊工程の技術習得に力を入れてきた。ナドキャップも熱処理、非破壊検査など複数の認証を取得した。これらが評価され、エンジンのギアボックスなどの納入実績ができつつある。

 会期中は複数社と商談を実施。経営層が出席したケースもあり、一定の手応えを得た。19年にはパリ国際航空ショーが控えており、駒井公一社長は「出展して受注につなげたい」と意気込む。

 受注にはこだわらず、社員の成長の機会と位置付ける企業もある。航空機のエンジン部品を手がける三差製作所(横浜市都筑区)は、16年以降3年連続の出展。三差康弘社長は「普段の仕事だけでは内向きになりやすい。世界を見ることで積極的になってほしい」と狙いを説く。

 重工大手などへのあいさつや会場視察に社員を同行させ、刺激を与える。毎年別の社員を連れて行き、社内の意識変革を促す。

三差製作所は折り紙を用意して足を止めてもらう工夫をした

日刊工業新聞2018年8月15日

日刊工業新聞 記者

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08月18日
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航空ショーに出展するだけで劇的な効果があるわけではないが、出展しないことには海外展開の足がかりを得られない。各社が長期スパンで取り組むことで、成果を上げることに期待したい。
(日刊工業新聞社名古屋支社・戸村智幸)

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