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経産省若手が語った、私の中のささやかな「チェンジ」

経産省若手が語った、私の中のささやかな「チェンジ」

左から宮脇さん、石澤さん、中田さん、工藤さん

 IT(情報技術)やAI(人口知能)などを活用した新たな教育「EdTech」(エドテック)が注目されている。経済社会が変化する中、本質的な問題解決能力を備えた人材を育てるには、知識偏重から主体性や創造性を育むよう学びの現場も変わっていく必要があるからだ。目指すのは、才能やスキルが突出した一部のリーダー育成だけでない。日々の小さな気付きをイノベーションにつなげる「50センチ革命」を起こす力が、私たちすべてに求められているのだ。

 そんな新たな学びの社会システムづくりに携わる経済産業省サービス政策課教育産業室は、自治体からの出向者や民間企業からの転職組など、さまざまな背景を持つ多様な人材が活躍する。そんな彼ら・彼女らが「チェンジメイカー」をテーマに自身にとっての「ささやかな挑戦」について語り合った。
 

可能性追求したい


 中田智弥さん(以下、中田)「熊本県天草市から経産省へ出向中で、現在は主にサービス産業の人材育成を担当しています。国の施策に携わる中にあっても、常に『地元にとってはどんな意味があるだろう』『どんな可能性をもたらすだろうか』と天草の人たちの顔が浮かびます」

 工藤さやかさん(以下、工藤)「経験者採用試験を経て2017年4月に入省しました。転職前はコンテンツビジネスに関わり、やりがいを感じ楽しく働いていましたが、日本の文化・芸術の発信や活用法についてもっと広い枠組みで取り組みたいと考えたからです」

 宮脇憲輔さん(以下、宮脇)「僕も中田さんと同様に、地方自治体からの出向組。しかも経産省との交流人事の第1号です。地元・岐阜県揖斐川町は天草よりもっと小さい町ですが、経産省が進める施策が、地元の人の事業活動や生活にどう関わるのか、国と地方、双方の視点を強く意識するようになりました」

 石澤みなみさん(以下、石澤) 「教育産業室の総括全般を担当しています。とりわけ私たちが事務局を務める『未来の教室とEdTech研究会』は、2018年1月から4カ月あまりの間に教育関係者や中高生、大学生を合わせ延べ200人以上が参加したワークショップを開催しました。同年代が「チェンジメイカー」について議論する姿を目の当たりにして、『人が変わるきっかけって何だろう』と考えるようになりました」

 「第4次産業革命」「人生100年時代」と位置づけられるいまー。経済産業省は、これら変化に対応する人材育成のあり方を探る取り組みを進めている。「『未来の教室』とEdTech研究会」では、ITの活用を通じて未知の課題に対して解決策を見いだせる人材をいかに育てるかをテーマに議論が重ねられてきた。

僕がなるより育てたい


 中田 「少子高齢化をはじめ、日本が直面する社会課題がすでに顕在化している地方では、施策立案側には、より深く、専門的な知識と、これらを効果的に活用できる人材育成が急務だと感じます。ところが、現在は、目の前の仕事に忙殺され、中長期的な視点で物事をじっくり考えたり、日常生活の小さな気付きや違和感を深く追求する余裕もないのが実情です。加えて地元出身者はどうしても、その土地の視点が色濃くなってしまう」

 宮脇 「僕の町も人口減少が進むなか、住民も巻き込んで、さまざまな活性化策を模索していますが、新たな取り組みを主導する人材の必要性を実感します。僕自身が『チェンジメイカー』を目指すというより、中央官庁に出向した経験を生かし、町の未来を担う『チェンジメイカー』を育成しなければと思っています」

 工藤 「先日、高校生と話す機会があったのですが、生徒の一人から『東京オリンピックが終わった2020年以降、日本は不況になるんですよね。その頃、社会に出る私たちどうしたらいいですか』と問われたんです。今からそんなことを考えて偉いな、と思うと同時にそれぞれの夢に胸を膨らませているはずの10代が漠然とした不安を感じて立ち止まっていることに違和感を覚えました。その時は『未来は自分たちで変えることができると思う』と答えましたが、その言葉は経産省に入り、実際に未来について考え行動している先輩方からを見たからこそ飛び出したのだと受け止めています」

 エドテックは、学習データをもとに学びの生産性を高めるだけでなく、一人一人の興味や関心に応じて、主体的な学びを追求する効果も期待される。

変化の時代だからこそ学ぶ


 石澤 「この中で一番若い私(22歳)は、物心が付いた頃からデジタルに親しんできた世代ですが、いま思うのは、ツールや環境に加え、興味を持たせてくれる周囲の存在が大きいことです。『知のナビゲーター』と言うのでしょうか。情報があふれているからこそ、『こんな世界もあるよ』と導いてくれると可能性はさらに広がると思います」

 宮脇 「同感です。10歳と7歳、二人の息子は野球が大好きでチームにも入っているほどなのですが、最近、大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手に興味があり、海外ニュースをチェックしているんです。内容が理解できないと、教えてくれと言われるので親子で英語を学んでいます。もっと知りたいから学ぶ―。主体的な学びの原点ですよね」

 中田 「大人自身が楽しんで、学び直しを実践する姿を示すことは大切ですよね。変化をストレスと受け止めるのではなく、変化の時代だからこそ、新しいことを楽しみながら吸収する姿勢が『チェンジメイカー』への一歩だと思います。私自身もあと1年あまり、経産省での経験を生かし、地域経済が直面する課題解決につながる、私なりの新たな『視点』を持ちたいと感じています」

 工藤 「今、官民の枠を超えた協働で社会課題の解決を目指す、経産省の『リビング・ラボ』事業などを通じて、出会う方々には、熱い思いや高い理想を抱いている人が少なくありません。さまざまな分野の人たちとの交流を通じ、私自身もチェンジメイカーとしてのマインドを持ち続けることの大切さを思い知らされます」
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
7月のMETIジャーナルの政策特集は「チェンジ・メイカーを育てる 『未来の教室』」です、ご期待下さい。

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