『アマゾンが描く2022年の世界』著者が語る、強みと対抗策

立教大学ビジネススクール教授・田中道昭氏

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 ―執筆のきっかけは。
 「ビジネススクールの教授、上場企業の社外取締役、経営コンサルタントの三つの仕事をやっていく上で、最先端の企業をベンチマークすることが重要だ。アマゾンは世界で一番ベンチマークすべき企業。最新のニュースを盛り込みつつ、3年たっても5年たっても色あせない本にすることを狙った。ストラテジーとマーケティングから読み解き、アマゾンの本質を突くことで、古くならない本になったと思う」

 ―アマゾンの強みの中でも特筆すべき点は何ですか。
 「やはり創業者ジェフ・ベゾスの『顧客第一主義』への徹底的なこだわりだ。これにより、顧客の経験価値や高い品質のカスタマー・エクスペリエンスを実現している。カスタマー・エクスペリエンスは“察するテクノロジー”と言える。例えば、スマートフォンで数秒遅れが発生しただけでもストレスを感じるなど、技術の進展によって、私たちがストレスを感じるものは高度化してきている。アマゾンはビッグデータと人工知能(AI)を活用することによって、人の欲するものやストレスを“察する”ことに非常にたけている」

 「話題の無人コンビニにしても日本の企業と『顧客第一主義』の点で違いがある。日本企業の多くは人手不足だから無人コンビニという発想。自分の会社の生産性を上げるためにテクノロジーを使う。アマゾンの場合は『レジに並ぶのも面倒』を解決するというようにあくまでも顧客目線の発想だ」

 ―「AWS」というクラウド・コンピューティングサービスについても触れています。
 「簡単に言えばアマゾン本体のIT部門がアマゾン本体と同時に顧客にビジネスを行っているようなもの。一貫して低料金でシェアも競争力も高い。アマゾン本体とAWSの両方を持っていることは、他にない強みだ。特に日本はサイバーセキュリティーにおいて遅れており、それが理由で信頼できるAWSに入る事例も多い」

 ―日本の小売業はかなりアマゾンによる影響を被っています。どのような対抗策がありえますか。
 「まず『アマゾンのなにがすごいのか』を理解していない人が、小売りの人でもいまだに多い。競合を決めるのは消費者なのに、アマゾンを競合だとも思っていない。すごさを理解していないのに対抗策もなにもない、ということをまず力説しておきたい。対抗策としてあるのは、生身の人にしかできないことの先鋭化だ。人の持っている五感、身体感覚を用いて、顧客の欲求を察すること、対話することなどが挙げられる。とはいえこうした細やかなサービスも、3年単位でAIが人に勝ってくる時代だ。人にしかできない人がすべきことや、店舗の定義が問われている。今のままでは完全にやられる。生易しい話ではない」

(文=吉田周示)

『アマゾンが描く2022年の世界』(PHP研究所 03・3520・9633)

 田中道昭(たなか・みちあき)氏 立教大学ビジネススクール教授
97年シカゴ大経営大学院卒。87年三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。同投資銀行部門調査役、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長などを歴任、06年よりマージングポイント社長。15年より立教大学ビジネススクール教授も務める。多業種へのコンサルティング経験をもとに、雑誌やウェブメディアにも執筆中。山梨県出身、53歳。

(2018年7月23日)

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梶原洵子
編集局第二産業部
記者

現在、小売りや宿泊などさまざまな場で、AIやロボットを活用した自動で低価格なサービスと、人の良さを生かした高付加価値のサービスに2極化しようとしています。

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