雲(クラウド)の上の頭脳戦 ICTの巨人「GAFA」が先導

名称の由来はグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン

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AIスピーカー「ウェーブ」を紹介する舛田淳LINE取締役
 産業界に押し寄せるデジタル革新の大波。その勢いは日を追って威力を増し、既存のビジネスを過去のものに押しやろうとしている。これを先導するのは「プラットフォーマー」と呼ばれる情報通信技術(ICT)の巨人たちだ。人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などを駆使して顧客接点を押さえ、データもろとも、すべての収益をクラウド(雲)上に吸い上げる。雲の上で頭脳戦を繰り広げる巨人たちの攻防と、デジタル革新に挑む各社の取り組みを探る。

GAFAけん引


 グローバルでAIサービスをけん引するのは「GAFA(ガッファ)」と呼ばれる企業群。名称の由来はグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの頭文字だ。

 米国勢ではIBMやマイクロソフト(MS)などの既存の大手ベンダーもAI活用に意欲的だが、勢いがあるのはGAFAをはじめとするクラウド専業の新興勢力だ。また中国勢では百度(バイドゥ)や騰訊控股(テンセント)といったIT大手の名前も挙がる。それぞれ寄って立つビジネスモデルは異なるが、いずれもAIへの開発投資や人的資源は桁外れに大きく、世の中を変える破壊力を秘めている。

 AIの適用領域はここにきて、自動運転や医療、介護など人の命に関わる分野に焦点が当たる一方で、身近な生活シーンでも商用化の波が広がっている。話題性ではAI搭載スピーカーが注目の的だ。グーグルは10月に「グーグルホーム」を日本市場に投入した。アマゾンの「アマゾンエコー」も年内に登場する。日本勢ではLINEが8月に「ウェーブ」の提供をはじめ、米国勢への対抗姿勢を鮮明にしている。
グーグルホーム(左)とグーグルホームミニ(グーグル日本法人発表会見)

多様なサービス


 AIスピーカーは話しかけるだけで、ニュースを読み上げたり音楽を再生したりできる。スピーカーに搭載されたクラウド型のAIプラットフォーム(基盤)が多様なサービスとひも付き、利用者の声に反応してそれらを呼び出す仕組みだ。

 今後、AIスピーカー市場が立ち上がり、一般家庭への普及が期待されるが、3社の真の狙いは端末販売による利益獲得ではない。3社のAIスピーカーはそれぞれ自社で開発したAI基盤を搭載しており、AIスピーカーはそのAI基盤の利用者を増やす手段にすぎない。実際に3社ともAI基盤を外部企業の多様な端末に提供し、自社のAI基盤への“入り口”を拡大する方針だ。出澤剛LINE社長は「ウェーブは(我々が開発したAI基盤である)クローバのショーケース」と言い切る。

 3社は自社のAI基盤の利用者を増やすことで、プラットフォーマーとしてサービスの提供など多様な事業機会を生み出す。特に、今は端末に触れる操作が全盛だが「いずれ声で操作するVUI(ボイス・ユーザー・インターフェース)時代が到来する」(業界関係者)と予想される。音声操作端末の頭脳となるAI基盤の覇権を握れば、VUI時代の覇者になり得る。

 AI基盤の覇権をめぐって、各社がつばぜり合いを始めているのが、外部サービスとの連携だ。つながるサービスの質や量はAI基盤の価値を左右する。グーグル日本法人の徳生裕人製品開発本部長は「利用者の幅広い要望には我々のサービスだけでは到底対応できない。外部サービスとの連携は非常に重要」と強調する。また、アマゾンジャパン(東京都目黒区)はAI基盤「アレクサ」の提供を始める前にもかかわらず、NTTドコモや三菱UFJフィナンシャル・グループなど多様な企業と連携する方針を宣伝する。

ツールを展開


 近く3社は、自社のAI基盤と外部サービスをつなぐツールを展開する。またアップルやフェイスブック、そしてソニーやパナソニックなど日本勢も虎視眈々(こしたんたん)とチャンスをうかがう。AIスピーカー市場が立ち上がりつつある中で、AI基盤の覇権争いと、その商機を狙う競争が熱を帯び始めた。
  

日刊工業新聞2017年10月24日

COMMENT

八子知礼
INDUSTRIAL-X
代表

後半はどうしてもAIスピーカーの話になってしまう流れになっているが、重要なのはクラウドと対になっているインテリジェント・エッジの存在。これを音声で吸い上げるハードウェアとして提供するか、ソフトウェアとして提供するか、あくまでもクラウド側に重きを置き続けるかどうかか、エッジにもインテリジェンスを持ってくるかがビジネスモデルとエコシステム形成の分かれ道になる。今はその過渡期。

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