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「研究開発に“オールジャパン”は禁句」(日本電産専務)

日本電産専務執行役員・福永泰氏インタビュー
 ―次代の事業創出に向けた種まきは。
 「キーワードは“ラストワンマイル”。従来は通信を各戸につなぐ最後の部分を指す言葉だったが、今は物流や電力分野で使われる。電力だと分散型電源が当てはまる。同じラストワンマイルだが研究テーマや分野が異なり、ビジネスも違う。省電力モーターをうまく利用した社会インフラが必要になる」

 ―開発を進める、マイコンを内蔵して適切なモーター駆動を可能にする「インテリジェントモータ」とも直結するテーマですね。
 「将来の電力ネットワークを考えれば、モーターを使う装置をどのように動かすかは、今と全く違うだろう。インテリジェントモータの出口戦略としても重要な点だ」

 ―現在は自動車やロボット、省エネ家電、飛行ロボット(ドローン)の四つを重点事業と位置付けています。
 「車載向けモーターは滋賀技術開発センターをはじめとした研究群があり、その支援をしている。中央モーター基礎技術研究所ではドローン用や物流のモビリティー(移動手段)用などに力を注いでいる」

 ―産業界では人工知能(AI)の活用が叫ばれています。
 「AIをどう使うかだ。日本電産は年間30億個以上のモーターを生産している実績があり、『モーターはこういう情報を出せる』と分かる。そこで出した情報を扱える人たちと組めれば良い。これからは情報を提供できる方が力を持つはずだ」

 ―日本の研究開発に何が必要でしょう。
 「“オールジャパン”と言わないことだ。工業史を見ても“オールジャパン”でやったことはない。世界人口70億人のうち、国内は1億2000万人だけ。(技術リーダーの)スーパーエンジニアだってその比率だ。品質の高い製品を生むには、世界中のスーパーエンジニアと組まなければならない」
                
日刊工業新聞2018年8月9日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
動くモノには必ずと言って良いほど使われるモーター。今後、電力供給が不十分な新興国では、高効率なモーターの需要がますます高まる。また、AI活用に必要なデータを収集するツールとしての展開も期待される。モーターを社会インフラの要素として訴求することが、新しい市場を取り込むカギといえそうだ。。 (日刊工業新聞京都総局・日下宗大)

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