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日本電産・永守会長が語る、自動車サプライチェーン大変革

「規模の大きい会社、歴史ある会社が強いとは限らない」
日本電産・永守会長が語る、自動車サプライチェーン大変革

日本電産・永守会長兼社長に聞く

 ―今春、電気自動車(EV)駆動用モーターを開発・生産する合弁会社を仏グループPSAと設立します。
 「同様の話はたくさんあり、1番目に決まったのがPSA。引き続き合弁も買収もどんどんやっていく。EV化で異業種の新規参入は増える。かつてのテレビやパソコンと同じく、自動車産業はサプライチェーンとの関係を含め、大きな変化が起こるだろう」

 ―独ボッシュ、独コンチネンタルなど、メガサプライヤーが、これからの競争相手です。
 「そうだ。ただ、他社はエンジン車向けが主体で、当社はEV関係中心の電動化を担うモーター会社。規模の大きい会社、歴史ある会社が強いとは限らない。実際、45年前に自宅で会社を作った当社は、世界最大のモーターメーカーとなっている」

 ―メガサプライヤーも駆動用モーターを手がけています。
 「(メガサプライヤーは)家電用やパワーステアリング用などのモーターをたくさん買って頂いているお客さんでもある。電機業界のように競争相手でも(競合メーカーから)良い部品を買う時代。車メーカーがエンジンのように駆動用を内製する考えも間違ってはいないが、系列取引なしに世界シェアを60%取れば、大手の車メーカー1社が全量内製しても当社には勝てない。EVでは系列を超えた取引が活発になる」

 ―最近の流れでは、モジュール化が求められています。
 「ECU(電子制御ユニット)も扱い、自動運転向け部品もある。今後、制御系や人工知能(AI)はとても大事。キャパシティー拡大のため、独ECU設計会社も買った。だが完成車は作らない。電池など、止まっているものにも興味はない。ロボットも完成品に近い部分までしか手がけない。顧客と競合するものは絶対しないのが、創業以来のポリシーだ」

 ―現況と、100年後の未来像をどう見ていますか。
 「事業を絞り、ソリューションで社会の困り事を解決してきたから成長できた。当社のモーターは軽薄短小で、低ノイズ、低振動、低消費電力。昔、パソコンは分厚かったが、ハードディスクドライブ(HDD)用モーターの小型化で薄くなった。環境問題でEVが注目され、人手不足でロボットや飛行ロボット(ドローン)が出てくる。そこに良質で低コストな部品を供給する」

 ―75歳までに社長職を譲る意向です。
 「リタイアするわけではない。最高経営責任者(CEO)なので大きな変化は起きない。会長や社長にしかできない業務が日本社会は多い。分担し、私の仕事の3割ほどを次の社長が担いつつ、学んでもらう。最低10年間やってもらう考えだ。世界を駆け回る体力を考慮すると、50代前半までが良い。5年か、10年(の期間を)かけるかは別にしてバトンをきちんと渡す」
日刊工業新聞2018年1月12日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
永守氏は2030年度目標の売上高10兆円を達成するにはBツーC(対消費者)領域も必要とし、米アップルを引き合いに顧客と競合しない世界初の製品をイメージしている。その戦略を主導する社長の候補は4―5人いるという。「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」などの三大精神、M&A(合併・買収)の神髄を受け継ぐのは誰か、注目度は高い。 (日刊工業新聞大阪支社・松中康雄)

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