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“空飛ぶクルマ”は東京五輪に間に合うの?

有志団体「CARTIVATOR(カーティベーター)」の山本賢一R&Dチームリーダーに聞く
 走行と飛行が可能な“空飛ぶクルマ”の実現を目指す有志団体「CARTIVATOR(カーティベーター)」が開発のギアを一段上げる。2020年の試験飛行で使う機体の設計にモデルベース開発(MBD)手法を採用する。東京五輪の開会式で空飛ぶクルマを使い、聖火台に点火することが目標の一つで、MBDによる効率化で実現を目指す。開発の現状などについて、山本賢一R&Dチームリーダーに聞いた。

 ―開発の進捗(しんちょく)は
 「試作機『SD―01』の設計と試作が終わり、飛行実験に向け準備している状況だ。今秋に予定する試験飛行が成功すれば、技術開発が登山で言う5合目くらいに達する」

 ―20年に予定する試験飛行機からMBD手法を取り入れます。
 「シミュレーション環境で実験でき、試作機の製作を可能な限り減らせるので開発期間の短縮や資金面で利点がある。開発には自動車工学はもちろん、流体力学や制御工学などの多様な技術領域の知識が必要だ。MBDは、幅広い知識を集約する技術者同士の“共通言語”にもなると考える」

 ―技術的な課題は。
 「プロペラの角度を調整して揚力を制御する『ピッチコントロール』、左右に回転するプロペラを上下に並べ回転エネルギーを打ち消す『2重反転』、効率よく風を下方向に流し揚力を高める『ダクテッド』の三つ技術の組み合わせた垂直離着陸機は世界初だ。前例がなくモデルが存在しない。実験を通じ理論式を導く」

 ―政府が20年代の空飛ぶクルマの実用化へ動いています。
 「(関係官庁には)審査基準の明確化や実験上のルールづくりといった事項で働きかけをしている。我々の力だけで“飛ばせる”世界ではない。官民協調して進めたい」
(聞き手・尾内淳憲)
日刊工業新聞2018年7月16日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
空飛ぶクルマの開発はトヨタ自動車のほか、パナソニックやNECといった日本を代表する企業が支援に名乗りを上げる。競合する外国勢は米ウーバーなどだ。迅速な開発と実用化に向けて、官民挙げたオールジャパン体制のサポートが必要になる。 (尾内淳憲)

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