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NECの逆張りシリコンバレー戦略

技術を見せて、現地で愛される会社に
NECの逆張りシリコンバレー戦略

新事業会社設立を発表した(左から)藤川CEO、NECビジネスイノベーションユニットのPG・マドハヴァン氏、NECの西原基夫執行役員

 NECは、米カリフォルニア州のシリコンバレーに北米事業開発会社「NECX(エヌイーシーエックス)」を設立する。7月2日から事業を始める。シリコンバレーのベンチャーが持つ技術などを取り込むのではなく、NECの各研究所が所有する技術をシリコンバレーに送り込んで事業化する。人員は当初8人。初年度は6プロジェクトを進めたい考えだ。2022年度には事業価値1000億円を目指す。

 シリコンバレーに進出する国内企業は、シリコンバレーのトレンドやアイデア、成長が期待できるベンチャー企業を把握し、自社の事業に取り込むことを目的にしていることが多い。NECXでは、NECが持つ日本の中央研究所をはじめとする世界7研究所の技術をシリコンバレーで公開する。公開した技術は、起業を目指す人材や事業化を支援するアクセラレーター(加速支援者)、投資家などとともにプロジェクトを立ち上げ、ビジネスモデル化を進める。シリコンバレーのエコシステムを活用することでNECが持つ技術を迅速に事業化する狙い。

 シリコンバレーで立ち上げた企業はNECが買い戻して次の中核事業にしたり、株式を取得したり柔軟に対応する。シリコンバレーで屈指のアクセラレーターである「シンギュラリティ・ユニバーシティ」との連携が決まっており、技術テーマの設定からスタートアップまでの期間を1年で行う。現地から巨額の利益を稼ぎ出す「ユニコーン企業」を生み出したい考え。

 NECXの最高経営責任者(CEO)にはNECの藤川修執行役員が就任する。藤川氏は今後の事業活動について「NECにはすばらしい技術はあるが事業化がうまくいっていなかった。人や技術をシリコンバレーに送り込み、新しい価値を生みだしたい」と意気込んだ。
(2018年6月21日 情報通信面)
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
「日本人は『何が次のトレンドですか?』と探りにくるが、一番大事なことを簡単に言うわけがない」と、以前にシリコンバレーに詳しいアクセラレーターに言われました。NECは、その逆で、技術を見せていくとのこと。現地で愛される会社になってほしいです。

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