パナソニックにシリコンバレー流のオープンイノベーションは根付くか

期待の新組織始動、AI起爆剤に革新的な製品生み出す

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R&D事業説明会で説明する宮部ビジネスイノベーション本部本部長㊧と馬場副本部長
 パナソニックはロボット、人工知能(AI)、IoT技術に基づく新規事業創出を積極化する。4月1日にイノベーション推進部門の中にビジネスイノベーション本部(宮部義幸本部長=代表取締役専務)を新設した。副本部長にはSAPジャパン(東京都千代田区)から4月に招いた馬場渉氏が就任。米シリコンバレーに常駐しオープンイノベーションを加速する。

 「パナソニックが本格的にイノベーションへかじを切ったと認識している」。馬場副本部長は4月19日に都内で開かれたR&D(研究開発)戦略の説明会でパナソニックの“本気度”を示した。

 あらゆるモノがつながるIoT時代の到来でパナソニックの製品群も変化を余儀なくされる。競合に立ち遅れないよう、外部の知見も活用しつつ革新性のある製品やシステムを研究開発してスピーディーに実用化するのがビジネスイノベーション本部のミッションだ。

 全社テーマの考え方を導入し、事業を横断した取り組みを進めていく。イノベーション推進の起爆剤の一つがAIだ。AIをテーマとした外部連携の強化に加え、内部でも技術者の増強などを図る。

 具体的な取り組みは、大阪大学との共同講座の設置や産業技術総合研究所とのコラボレーションのほか、5年以内に1000人のAI技術者増や3年後に300人規模のAI専門家を獲得といった人材の獲得など。AI技術を持つ人材は世界的な不足状況であり、パナソニックは大学などとの連携で、AI人材の育成も積極化する。

 また、イノベーション推進本部内には、新たな人材育成プログラム「NEO(ネオ)」も立ち上げた。新たな領域やビジネスモデルに挑戦する「次代を担う社内起業家」(宮部本部長)を育成することで、AIやIoTなどの新たな技術を迅速にビジネス化していく。
歩行者知見技術を使ったコミューターの実証実験

もう一度挑戦者の精神を養う


 パナソニックは2018年に創業100周年を迎える。創業の意識が薄れる中で、もう一度挑戦者の精神を養い、IoT時代へのシフトをチャンスに変えていきたいという。

 パナソニックはAI技術のディープラーニング(深層学習)を利用した自動運転に必要な歩行者検知技術や、音声対話を生かした多言語自動翻訳技術、自動精算と袋詰めを自動化する自動セルフレジ「レジロボ」などの実用化に取り組んでいる。

 どれも早期の実用化が期待されるもので、安全性を重視しつつ機能を高めることが求められている。こうした技術群を、外部の技術も活用しつつ製品に仕上げていく。

 馬場副本部長の役割は、シリコンバレーの考え方やビジネスの動きをパナソニックに適用させることだ。馬場副本部長は「シリコンバレーは共通の仕事の進め方や考え方があるから強い」と話す。

 シリコンバレーには教育でも顧客視点や技術革新の重要性が説かれ、皆に染みついているという。全てをシリコンバレー流にするのではなく、パナソニックの企業風土に合うものを活用していけば再成長のきっかけになる。早期に成功事例を出せるか、注目される。

日刊工業新聞2017年5月29日

COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア局長 DX担当

SAPジャパンの顔だった馬場さんを引き抜いてきたあたり相当な力の入れようであることが分かる。宮部さんの担当する領域が広すぎて新事業組織もこれまでなかなかブレークしなかった。馬場さんがあえて外(シリコンバレー)にいるのは良いことだと思うが、なかなか保守的でスピード感のない門真の本社や事業部門の壁は厚い。日本側でその動きに呼応する強力なチームが作れるかが最大のポイントだろう。人材も技術には良いものがあるので。

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