ニュースイッチ

ダイハツが主力小型車を直噴化しない理由

エンジン開発責任者に聞く「ポート噴射にこだわる」
ダイハツが主力小型車を直噴化しない理由

軽の主力車種「ムーブ」(写真はイメージ)

自動車メーカーは電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)の開発に力を注ぐ。世界で進む環境規制を背景に、電動化は避けて通れない。低価格・低燃費のエンジン車が強みのダイハツ工業は電動化とどう向き合うのか。エンジン開発責任者の茨木幹上級執行役員は、「電動化に取り組まなければ車メーカーと認められなくなる」と時代の要請を認める。茨木上級執行役員に開発方針を聞いた。

 ―2020年までに新設計思想「DNGA」に基づく軽自動車を投入する計画です。
 「低燃費・低価格の路線は変わらない。可変圧縮や高圧縮燃焼といった目新しい技術ではなく、既存技術を最大限使う。機械の動きなどの無駄をなくし熱効率を上げる。DNGA第1弾の燃費性能は、従来測定方法のJC08モードより厳しいWLTCモードで評価しても、現行品と同じ数値を出したい」

 ―既存技術をどのように活用しますか。
 「(圧縮比よりも膨張比を大きくして熱効率を改善する)アトキンソンサイクルに、ターボチャージャー(過給器)や排ガス再循環装置(EGR)を組み合わせる方法がある。燃焼しにくくなり、点火系の課題克服が必要だ。他社は筒内に燃料を直接噴射する直噴エンジンの採用が多いが、当社はコストと効果を考え、燃焼室直前の吸気系へ燃料を供給するポート噴射にこだわる。主力小型車を直噴化する考えはない」

 ―HVなど電動化技術の取り組みは。
 「地域や規制により、方式が変わる可能性がある。エンジンブロックやヘッドなどは技術を磨いて共通部分とするが、後から付けるEGRや可変バルブタイミング機構などをHV向けにしたり発電用に機能を絞ったりする方法もあるだろう」

 ―エンジンの可能性をどう見ていますか。
 「エンジン需要はまだ続く。インドネシアやマレーシアなど当社主力の東南アジア、トヨタ自動車グループ内で任されている新興国は、内燃機関を活用する余地がまだある。新興国は電力インフラなどを考えるといきなりEVが普及するのは難しく、エンジンを使うHVから入るだろう」
ダイハツ工業上級執行役員・茨木幹氏
日刊工業新聞2018年6月14日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
トヨタ自動車の完全子会社となり、グループ内の小型車と新興国戦略を任されたダイハツ工業。従来より責任感や重圧は高まっているようだ。DNGA第1弾のエンジンや車体はその戦略のベースとなる。電動化対応も見据えた低価格の小型車という難題に対して、どんな解を示すのか、力の見せどころだ。 (日刊工業新聞大阪支社・錦織承平)

編集部のおすすめ