火力発電所のトラブル、AIで未然に防ぐ

中部電力とNECが共同開発

 中部電力は人工知能(AI)やビッグデータを用いた火力発電の運転支援システムをNECと共同で開発した。運転データを分析して異常の予兆を検知するシステムで、中部電の一部の火力発電所への導入に加え、同業の発電事業者への外販を本格化する。同社はビッグデータを利用して本店(名古屋市東区)会議室の利用状況を調査し、予約との乖離(かいり)縮小を図るなど情報通信技術(ICT)活用を積極的に進めている。

 火力発電運転支援システムは、発電プラント1基当たり1500―3500個のセンサーから情報収集した圧力や温度、流量などの膨大な運転データをAIが学習、データ同士の関係性モデルを築く。数万から数十万程度の関係性から相関性が低くノイズになり得る関係性は除外して精度を高める。

 「空気密度が異なる夏と冬で別の標準モデルが必要」(石上秀之発電カンパニー火力発電事業部IT・システムグループ長)と季節変動も考慮する。モデルと実際の運転データを比較し、通常と違う関係性があれば異常として検知する。

 トラブルの予兆を捉えて従来より早く異常を検知でき、早めの対処でトラブル防止につながる。発電プラントの高稼働率を保った運転が可能になる。
同システムを碧南火力発電所(愛知県碧南市)と上越火力発電所(新潟県上越市)に導入した。導入後の異常検知はまだないが、導入前の有効性検証テストで「異常発生の10日前に検知した事例もあった」(石上グループ長)。新名古屋火力発電所(名古屋市港区)や西名古屋火力発電所(愛知県飛島村)などへの導入も検討する。

 また発電カンパニー火力発電事業部に外販窓口となるエンジニアリングサービスセンターを設置した。大手電力会社に加え、独立系発電事業者(IPP)や自家発電事業者などの小規模発電事業者にも売り込む。発電設備の高効率運転を支援するソリューションサービスとして展開、収益増を図る。

 会議室利用状況調査は、各会議室に設置したセンサーから5分ごとに照度や温度、気圧などのデータを収集、使用中か未使用かを判断する。予約システムでの予約状況と比較、稼働率を算出する。

 調査した背景には、予約キャンセル時に取り消し手続きをしない場合が多く、稼働率が予約状況ほど高くないことがあった。1カ月の調査で予約取り消し忘れによる未利用時間は24%あった。社内のポータルサイトで予約取り消しを促したら12%と半減した。

 このほか、時間の過剰予約による未利用などもある。稼働率向上に向け予約した人への数日前の通知、未利用時の開放通知などの手段を今後検討する。
会議室利用調査に用いる照度などを計測するセンサー(中部電力提供)

日刊工業新聞社2018年5月28日

日刊工業新聞 記者

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05月28日
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この調査はIT部門の若手人材のスキル向上を兼ねている。センサーを用いたデータ収集や利用実績確認などのシステムは外部に委託せずに自社で構築した。今後もできるだけ費用を抑えながら会議室の稼働率向上につながるシステムに改良する方針だ。(日刊工業新聞社名古屋支社・市川哲寛)

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