「MRJのために1円もお金を借りていない」(三菱重工CFO)

大型プロジェクトで苦戦も財務体質の改善急ぐ

 主力の火力発電設備事業や国産小型旅客機「MRJ」など、大型プロジェクトで苦戦が続く三菱重工業。不振事業の立て直しに向けて構造改革を進める一方、フリーキャッシュフローの創出や有利子負債の圧縮など財務体質の改善を加速している。小口正範副社長兼最高財務責任者(CFO)に、改革の状況や財務戦略を聞いた。

 ―2018年3月期の受注不振で受注残が減少しています。現状をどう見ていますか。
 「前期はガスタービンなどを手がけるパワー部門の不振が響いた。一方、自動車用ターボチャージャー(過給器)や冷熱など中量産品の受注規模は1兆円あり、堅調に推移している。パワーは石炭火力発電所向けの手持ち工事があるので、2年間は売り上げも見えている。問題はそれ以降だ。受注残が消化されるので、この間に固定費の圧縮を進める」

 ―パワー部門の固定費削減に向けた具体策は。
 「工場の再編や繁忙部門への人員シフトが軸となる。エンジニアリングや中量産品部門は人手不足感があるので、パワーの人員を振り向ける。一方、海外ではドイツで人員削減に乗り出したほか、米国でも生産拠点を効率化する。20年度までにパワー全体で1割の固定費削減を目指す」

 ―財務の状況は。
 「世間的に当社は財政が厳しく、田畑を売ってなんとかやりくりしていると見られがち。ただ、もう少し現実をみてほしい。バランスシート(BS)を圧縮しながら、しっかりコントロールしている。17年度も1000億円のフリーキャッシュフローを創出できそう。実際、MRJを開発しながら大型客船の損失を処理し、有利子負債を圧縮してきた」

 ―MRJ開発が三菱重工本体の財務を圧迫していませんか。
 「MRJのために1円もお金を借りていないし、(開発子会社である)三菱航空機の資本も一切増強していない。MRJの単年度キャッシュフローは16年度にピークを迎えると考えていたが、少し後ろにずれている。20年度までに開発を完了するつもりで、こうなれば投下資金も減少していく」

 ―資産を入れ替えるアセットマネジメントに力を入れています。
 「三菱自動車の株式を売却した替わりに、フランスの原子力関連会社2社に出資した。自動車と原子力をてんびんにかけたときに、どちらが当社にメリットがあるか。三菱自動車に対する当社の関与度は低い。半面、原子力事業は、廃炉や燃料の再処理などで仏企業の技術は競争力がある。収益性が高められるよう、BSの中身を置き換えたということだ」
三菱重工業副社長兼CFO・小口正範氏

(聞き手=長塚崇寛)

日刊工業新聞2018年4月6日

長塚 崇寛

長塚 崇寛
04月07日
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本年度からスタートした3カ年の新中期経営計画でも、前中計で掲げた売上高5兆円の目標を堅持するもよう。成長投資の原資を確保し、米ゼネラル・エレクトリックや独シーメンスと戦う上でも5兆円への到達は不可欠だ。財務規律の引き締めと、大胆な成長投資のバランスがカギとなりそうだ。

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