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泊原発再稼働の見通せず…新電力攻勢で北電は苦境に

新料金プランで打開目指す
 北海道電力が電力小売り自由化の影響を受け、厳しい経営環境に置かれている。収益源となる販売電力量の減少に歯止めがかからず、大手電力会社の中でも落ち込みが目立つ。泊原子力発電所(北海道泊村)の再稼働の見通しが立たず、全国でも高い電気料金により、新電力に顧客を奪われている。新料金メニューなどの手を打つが、苦境から抜け出すのは容易ではない。

 北電の2018年3月期の販売電力量は、前期比7・5%減の248億600万キロワット時と、電力大手10社の中で最も減少幅が大きかった。19年3月期も同6・0%減を予測する。大手10社で高い方から1、2番目の電気料金のため、営業攻勢をかける新電力に顧客を奪われている。

 その一つである北海道ガスは、18年3月期の販売電力量が前期比約2・3倍の5億253万キロワット時に拡大。電力事業の売上高は168億円と前期から約100億円伸ばし、会社全体の売上高が過去最高を更新するのに寄与した。契約件数は9万6019件だが、北ガスの大槻博社長は「20年度に20万件が目標」と鼻息が荒い。

 北電にとって電気料金引き下げのカギを握る泊原発は早期稼働の見通しが立たない。原子力規制委員会の審査が、発電所敷地内の断層の活動性評価や、地震による防潮堤の地盤液状化などの課題を指摘する。

 北電の真弓明彦社長は「電力の安定供給に必要」と早期稼働を目指しているが、課題のクリアには時間がかかる見込みだ。

 こうした状況下において北電は、さまざまな打開策を展開する。4月には新たな電気料金メニューを投入した。電力使用量が平均よりやや多い世帯(月250―400キロワット時)や、夏の冷房用エアコンを所有する世帯向けに料金が安くなるプランだ。

 さらに顧客の使用エネルギーを一括管理するエネルギーソリューション事業を本格展開する。エネルギー設備は北電が用意するため、顧客は初期投資がかからず省エネで高効率の設備を利用できる。

 また、北電初の液化天然ガス(LNG)による石狩湾新港発電所が19年2月に1号機が稼働。それに先立ち、LNGタンクが完成する8月以降にガス供給事業を始める。エア・ウォーター、岩谷産業と提携し、工場などの顧客にタンクローリーで販売する。
 

日刊工業新聞2018年5月18日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
こうした取り組みで販売電力量の落ち込みをどこまでカバーできるのか。軌道に乗るまで当面は厳しい状況が続きそうだ。 (日刊工業新聞社札幌支局長・村山茂樹)

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