「健康経営」向けウェアラブル、最も気にする数値は血圧?睡眠?ストレス?

起爆剤は何か

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オムロンヘルスケアが開発中の血圧計
 身に付けて使うウエアラブル端末を用いたヘルスケアビジネスが活発だ。オムロンヘルスケア(京都府向日市)は腕時計型の血圧計を開発し、2019年度にも日本で販売する予定だ。日立製作所は従業員の健康管理を支援するサービスを開始。医療機器レベルの次世代端末の開発や法人市場の開拓が加速する。特定の病気を対象にしたサービスを開発したり、企業の生産性を高める「健康経営」を後押ししたりする動きが鮮明となっている。

 「ウエアラブルの医療機器を目指し、血圧測定をもっと身近なものにする」―。オムロンヘルスケア循環器疾患商品事業部の茎田知宏グループリーダー代理は開発を進める腕時計型血圧計の狙いをこう説明する。一般の血圧計と原理は同じで腕に巻くバンドに「カフ」と呼ばれる空気袋を内蔵して測定する。

 利用者の多くは血圧計を購入しても時間の経過とともに測定頻度が落ちる。そこで血圧計の不健康なイメージを払拭(ふっしょく)したデザインにし、測定頻度を高めることが必要と判断。日常生活に溶け込む腕時計型にし、手軽に測定できるようにした。

 開発中の端末は、計測時に腕を心臓の高さにあわせボタンを押すだけで腕を圧迫して高精度で測定可能。スマートフォンのアプリケーション(応用ソフト)で見える化する。薬事上で決まった精度を満たすため「一定の人数を測定し、精度を確認している段階」(茎田グループリーダー代理)という。高血圧の予防を強化する米国を皮切りに日本でも販売する予定。

 一方、市場に出回っているウエアラブル端末は健康維持を目的とした歩数や睡眠時間、消費カロリー、心拍数を測定する活動量計で医療機器と異なる。IDCジャパン(東京都千代田区)によると、ウエアラブル端末の国内出荷台数は22年に18年見通し比約25%増の110万台と予測。市場では米アップルや米フィットビット、米ガーミンといった北米企業の認知度が高い。

 フィットビットは通販サイトや家電量販店などで活動量計を販売し、日本での市場シェアは約6%。今後の世界戦略として糖尿病や高血圧、無呼吸症候群、ストレスといったテーマを設定、関連データを取得する端末開発を進める。フィットビット・ジャパン(東京都渋谷区)の千川原智康カントリーゼネラルマネージャーは「ウェルネスからヘルス領域を開拓する。糖尿病なら2型の予備軍がターゲット」と説明する。

 こうした病気の予防を意識した端末開発が進む一方、消費者市場で一挙に普及するトリガーを欠いているのも事実。そのため端末メーカー各社はリストバンド型端末を企業に貸与・配布し、従業員の健康増進に役立てる取り組みが増えている。従業員の体調が悪いと仕事のパフォーマンスが低下するため、企業の健康経営を支援することで生産性向上につなげる狙いだ。

 日立製作所はウエラブル端末を活用した企業の健康経営を支援するサービスの提供を始めた。1日の平均歩数と早歩きの活動時間により疾病予防につながることを明らかにした「中之条研究」の成果を踏まえ、その仕掛けをウエアラブル端末とスマホアプリに搭載した。

 例えば1日8000歩・20分以上の早歩きを高血圧や糖尿病の予防効果が期待される基準値として設定。利用者はアプリで歩数と早歩きの活動時間を確認し、疾病予防につながる運動量を把握できる。

 ただ端末やアプリを配布しても時間が経つと利用率が低下する傾向があるため、「企業が健康経営の取り組みを継続するための施策が重要」(二村潤・日立インキュベーション本部本部長)とも認識。運動や食事、睡眠のリズムを意識して生活することで体調を整えるプログラムも用意している。

 提供先の企業が部署横断でチームを作って互いにサポートし、ヘルスコーチがアドバイスしながら健康経営の取り組みを継続できるように支援する。

 リハビリテーションに特化したウエアラブル端末の活用サービスもある。Moff(東京都千代田区)が三菱総合研究所と共同で提供するのが、身体機能を測定・見える化するサービス「モフ測」。手首や足首に装着した端末から歩行やバランス、腕の動作、関節可動域のデータを取得し、リアルタイムでタブレットに表示する。

 特徴は「ビジュアルと数値でリハビリによる改善を見える化できる」(高萩昭範Moff社長)点。リハビリではどの程度の運動量を行ったかというより、科学的なデータに基づく改善効果が重視される。効果の見える化とともに病院や介護施設と情報を共有することでリハビリの質を高めていく。
   

日刊工業新聞2018年5月8日

COMMENT

ウエアラブル端末とアプリとの連携サービスが増えるのに伴って個人の蓄積データの利活用が進む。今後はそうしたデータを安全に活用するためのセキュリティー対策や基盤構築など、国内の利用環境を整備することも欠かせない。 (日刊工業新聞社・清水耕一郎)

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