オンライン診療は本当に良いことずくめなのか?

短期的には苦労多く、報酬点数が普及へのカギ

 情報通信機器を通して医師が患者の診察や診断を即時に行うオンライン診療が注目を集めている。政府は4月の診療報酬改定でオンライン診療を評価する枠組みを設け、実施にあたっての指針も策定した。医療ITベンチャーはこうした動きを歓迎する一方、短期的なオンライン診療の市場性には慎重な見解を示している。各事業者は医療の効率化に資するような実績を積み上げ、中長期の普及につなげられるか試される。

 「(医師の)先生方は通院困難者への対応や、治療離脱の防止でオンライン診療を使いたいと考えている」。オンライン診療システム「YaDoc(ヤードック)」を手がけるインテグリティ・ヘルスケア(IH、東京都中央区)の園田愛社長は、こう分析する。

 内閣府によると、介護保険制度における要介護または要支援の認定を受けた人は、2014年度末に591万8000人。03年度末時点比59・8%増加した。

 一方でIHの園田社長は、在宅療養支援診療所の数が直近では減ってきていると指摘。「通院困難者への新たなソリューション(問題解決)が必要」とし、オンライン診療がその手段になり得ると訴える。

 また園田社長は、生活習慣病患者の利便性向上にもオンライン診療が役立つとみている。国立国際医療研究センターなどが14年にまとめた「糖尿病受診中断対策包括ガイド」によると、受診中断に至る理由で最も多いものは「仕事(学業)のため忙しいから」だった。患者が通院の手間や医療機関内での待ち時間を気にしなくて済むようになれば、治療を続けやすくなる可能性もある。

 国も遠隔診療を推し進める。従来は、離島に患者がいるなどの理由で対面診療が困難な場合に限り遠隔診療が行われるとみなされてきた。

 だが厚生労働省は15年8月に条件を厳しく解釈しなくてよいという趣旨の事務連絡を発出し、実質的に遠隔診療を解禁。16年11月に行われた政府の未来投資会議では、安倍晋三首相が遠隔診療を推進する旨の発言をした。

「既存の医療に大きく取って代わるものではない」


 これらの動きを受け、中央社会保険医療協議会(中医協、厚労相の諮問機関)で遠隔診療に関する議論が進行。その結果、18年度診療報酬改定では先進的な医療技術の導入を進める観点で遠隔診療を評価する枠組みが設けられた。新設された診療報酬項目には、「オンライン診療料」や「オンライン医学管理料」などがある。

 また厚労省は18年3月、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」をまとめた。オンライン診療は患者の求めがあった場合に限って行うことや、初診は基本的に対面診療とするといったことを定めた。医療機関がオンライン診療料などを算定する際は、同指針に示された診療体制を持つことが求められる。

 この指針では、望ましいオンライン診療の利用例も明示された。例えば生活習慣病等の慢性疾患について、定期的な対面診療の一部をオンライン診療に代替し、医師と患者の利便性向上を図ることは適切だとしている。

 こうした政府の動きを医療ITベンチャーは歓迎する。オンライン診療アプリケーション(応用ソフト)「CLINICS(クリニクス)」を展開するメドレー(東京都港区)の豊田剛一郎代表取締役医師は「オンライン診療は遠い場所にいる患者さんを診るためのツールではなく、患者さんと医者の接し方の一つとして使うべきものだ。この認識を浸透させることは大変だったので、オンライン診療料ができたのはありがたい」と話す。

 ただ、豊田代表取締役はオンライン診療関連サービスの市場性そのものには慎重な見方を示す。「オンライン診療料は70点(700円)なので、医療機関が(サービスの提供業者へ)払える額には限界がある。患者さんと医療をつなぐ基盤という側面も強く、普及させるためにもそれほど単価が取れない。短期的には苦労が多い」。

 IHの武藤真祐会長も、「オンライン診療は既存の医療に大きく取って代わるものではない。入院・外来・在宅という、対面を原則とする医療に加わることによって、質の向上や効率化が実現できるものだ」と指摘する。

 また、18年4月の診療報酬改定についても良い事ずくめだとはみていない。「下手にオンライン診療が広まって変な使われ方がされると、制度自体を否定する動きが出てくる。しっかりとした事例を積み上げていきたい」。

 厚労省の指針にも明記されているが、オンライン診療の実施時には情報漏えい対策や患者の本人確認などが必要になる。高齢の患者でも使いやすいよう、システムやアプリの表示や操作を分かりやすくすることも求められる。
高齢患者の負担軽減が期待できる(イメージ、インテグリティ・ヘルスケア提供)

(文・斎藤弘和)

日刊工業新聞2018年5月3日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
05月04日
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オンライン診療が医療の効率化につながることが証明されれば、将来、オンライン診療料などの診療報酬点数が加算される可能性もある。サービス提供事業者はまず、地道に実績を重ねることが先決と言えそうだ。
(日刊工業新聞社・斎藤弘和)

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