官民連携の「SDGsビジネス」は地域から創出される
関東経産業局や近畿経済局が応援
地域の経済産業局が旗を振り、企業の「持続可能な目標(SDGs)」への取り組みを支援している。関東経済産業局は自治体と組み、中小企業の事業づくりを後押しして地域活性化につなげる。近畿経済産業局が海外展開も見すえて設立した活動組織には、250社・団体が結集した。地域から官民連携のSDGsビジネスが次々に創出されそうだ。
**関東経産局/困り事解決事業 中小の参加促進
関東経産局は2018年度、「SDGs地域コンソーシアム」を試行的に立ち上げる。自治体、地元企業、地域金融機関、大学などが連携し、地域におけるSDGs推進の場とする。期待するのが中小企業の“稼ぐ力”の向上による地域活性化だ。
SDGsは社会・環境・経済の課題を解決した世界像を描いた国連の30年目標。国連は企業に本業で目標達成に貢献するように求めている。大企業は課題解決が市場獲得につながると理解し、SDGs達成への貢献を宣言している。しかし中小企業は、課題解決と経営メリットを結びつけて考えにくい。
もちろん中小企業も課題に目を向けることで新規事業を思いつける。既存技術が課題解決に役立つこともあり、新しい市場に打って出られる。関東経産局企画調査課の北原明課長は「社会課題は大きなビジネスチャンス」と認識する。
関東経産局は中小企業を調査し、社会課題と事業を結びつける機能が必要と分かった。その機能を自治体などに担ってもらおうと地域コンソーシアムを着想した。
参加する自治体や大学が地域の困り事を整理して具体的に示す。地元経済団体も加わり、困り事を解決する事業を検討する。さらに地域金融機関が事業を支援する投融資や地域ファンドを練る。あとは事業を担う中小企業を募るという流れだ。
参加する中小企業にとっては解決する課題が明確となっている。つまりニーズがはっきりした状態だ。金融支援も用意されており、課題解決と経営メリットを直結できる。
地元に必要とされる課題解決事業なら、息の長い事業になる。地域に根ざすほど、取引先の海外移転など外部環境に左右されなくなり、中小企業は経営が安定する。自治体にも税収や雇用でメリットがある。もちろん地域課題解決は住民サービスとなる。
関東経産局は事業初年度となる18年度、一つの自治体を選んでモデル事業を実施する。1年かけて得た経験を整理し、他地域に横展開する。
関東経産局の管内は自動車産業依存の傾向が強まっており「業種の多様化が必要」(北原課長)となっている。自治体によって課題が異なり、地域コンソーシアムから創出される事業も違う。SDGsを活用し、多様な業種を生み出して強靱(きょうじん)な産業構造をつくる。
**近畿経産局/産学官で組織設立 認知度高め連携加速
近畿経済産業局と国際協力機構(JICA)関西国際センターは17年12月、「関西SDGsプラットフォーム」を設立した。SDGsを産学官で推進する関西初の組織だ。イベントや分科会などの活動を通じ関西でSDGsの認知度を高め、参加者の連携を促し、国連が掲げる目標達成を目指す。設立にあたり、北岡伸一JICA理事長は「関西をモデルに全国展開したい」と意気込んだ。
20日時点の会員数は250社・団体。設立時の100社・団体から大幅に拡大している。5月中に開く運営委員会で、今後の活動方針を決めていく。
近畿経産局が同プラットフォームのビジネス分野を担う分科会として、3月に全国の地域経産局に先駆け設立したのが「関西SDGs貢献ビジネスネットワーク」だ。パナソニックや関西電力、りそな銀行といった企業や、関西経済連合会、大阪商工会議所などの経済団体が参加し、会員は20日時点で180社・団体となった。
近畿経産局の森清局長は「関西がSDGsを通じてアウトバウンド(海外展開)とインバウンド(訪日外国人旅行者)の中心になっていく」と期待を寄せる。18年度はSDGs自体の周知を行いつつ、SDGsに取り組む企業の発掘や企業連携を狙う。100人規模のセミナーを神戸で開くのを皮切りに、福井県を含む2府5県でも計画する。
4月に入り、大阪府もSDGs推進本部を設立した。大阪大学も18年度から東南アジアの4カ国でSDGsに取り組む研究教育施設を順次設置する計画があるなど、関西発で産学官の動きが活発化している。
(文・松木喬、青木俊次)
**関東経産局/困り事解決事業 中小の参加促進
関東経産局は2018年度、「SDGs地域コンソーシアム」を試行的に立ち上げる。自治体、地元企業、地域金融機関、大学などが連携し、地域におけるSDGs推進の場とする。期待するのが中小企業の“稼ぐ力”の向上による地域活性化だ。
SDGsは社会・環境・経済の課題を解決した世界像を描いた国連の30年目標。国連は企業に本業で目標達成に貢献するように求めている。大企業は課題解決が市場獲得につながると理解し、SDGs達成への貢献を宣言している。しかし中小企業は、課題解決と経営メリットを結びつけて考えにくい。
もちろん中小企業も課題に目を向けることで新規事業を思いつける。既存技術が課題解決に役立つこともあり、新しい市場に打って出られる。関東経産局企画調査課の北原明課長は「社会課題は大きなビジネスチャンス」と認識する。
関東経産局は中小企業を調査し、社会課題と事業を結びつける機能が必要と分かった。その機能を自治体などに担ってもらおうと地域コンソーシアムを着想した。
参加する自治体や大学が地域の困り事を整理して具体的に示す。地元経済団体も加わり、困り事を解決する事業を検討する。さらに地域金融機関が事業を支援する投融資や地域ファンドを練る。あとは事業を担う中小企業を募るという流れだ。
参加する中小企業にとっては解決する課題が明確となっている。つまりニーズがはっきりした状態だ。金融支援も用意されており、課題解決と経営メリットを直結できる。
地元に必要とされる課題解決事業なら、息の長い事業になる。地域に根ざすほど、取引先の海外移転など外部環境に左右されなくなり、中小企業は経営が安定する。自治体にも税収や雇用でメリットがある。もちろん地域課題解決は住民サービスとなる。
関東経産局は事業初年度となる18年度、一つの自治体を選んでモデル事業を実施する。1年かけて得た経験を整理し、他地域に横展開する。
関東経産局の管内は自動車産業依存の傾向が強まっており「業種の多様化が必要」(北原課長)となっている。自治体によって課題が異なり、地域コンソーシアムから創出される事業も違う。SDGsを活用し、多様な業種を生み出して強靱(きょうじん)な産業構造をつくる。
**近畿経産局/産学官で組織設立 認知度高め連携加速
近畿経済産業局と国際協力機構(JICA)関西国際センターは17年12月、「関西SDGsプラットフォーム」を設立した。SDGsを産学官で推進する関西初の組織だ。イベントや分科会などの活動を通じ関西でSDGsの認知度を高め、参加者の連携を促し、国連が掲げる目標達成を目指す。設立にあたり、北岡伸一JICA理事長は「関西をモデルに全国展開したい」と意気込んだ。
20日時点の会員数は250社・団体。設立時の100社・団体から大幅に拡大している。5月中に開く運営委員会で、今後の活動方針を決めていく。
近畿経産局が同プラットフォームのビジネス分野を担う分科会として、3月に全国の地域経産局に先駆け設立したのが「関西SDGs貢献ビジネスネットワーク」だ。パナソニックや関西電力、りそな銀行といった企業や、関西経済連合会、大阪商工会議所などの経済団体が参加し、会員は20日時点で180社・団体となった。
近畿経産局の森清局長は「関西がSDGsを通じてアウトバウンド(海外展開)とインバウンド(訪日外国人旅行者)の中心になっていく」と期待を寄せる。18年度はSDGs自体の周知を行いつつ、SDGsに取り組む企業の発掘や企業連携を狙う。100人規模のセミナーを神戸で開くのを皮切りに、福井県を含む2府5県でも計画する。
4月に入り、大阪府もSDGs推進本部を設立した。大阪大学も18年度から東南アジアの4カ国でSDGsに取り組む研究教育施設を順次設置する計画があるなど、関西発で産学官の動きが活発化している。
(文・松木喬、青木俊次)
日刊工業新聞2018年5月1日